第13話/根暗探偵の推理
「おい、爺さん。あんた人間じゃないだろ」
呼び止める言葉が特に思いつかなかった俺は、桃瀬と前を歩く爺さんにストレートに投げかけた。
爺さんはゆっくりと振り返った。一瞬困惑した表情を見せたが、すぐ後、可笑しそうに嗤った。
「は? ははっ、儂が、人間じゃない? なかなか面白い事を言う坊やじゃのぅ」
「はぁ? ちょっと、何言ってんの灰! ごめんなさいお爺さん。こいつスゴい変な奴なんです」
桃瀬に「スゴい変な奴」と言われ心が傷ついたが、冴え渡った頭脳が俺を引き戻す。
「会った時からおかしいと思ったんだよ。昼休みの騒がしい食堂ならともかく、人通りが疎らなここら辺の住宅街で全く気付かれずに音もなく俺の背後に立つなんて事、普通なら不可能なんだよ。それに」
俺はポケットのない服を着て、尚且つ手ぶらな爺さんを指差し、言い放った。
「財布も持たずにスーパーで何する気なんだ? 人間に化けるならもう少し気をつけろよ」
「ん?おお、しまった。財布を忘れたしまったようじゃ」
チッ、まだシラを切るつもりか。
「だったら決定的な事、教えてやるよ」
あくまで惚ける爺さんに、俺は絶対言い逃れ出来ないトドメの一撃を叩きつけた。
「足許見てみな。あんた、影が無いぞ」
「⁉︎」
「確かに……ホントだ……」
桃瀬と疾風宮が、爺さんの足許を見て驚きを口にする。
そんなふたりと俺とを交互にキョロキョロ見返して、爺さんは明らかに狼狽している。正体を見破られた怒りと恐れのこもった険しい目で俺を睨みつけ、遂にこう言った。
「何故、ソレヲ……オ前ラガ影二気付カナイヨウ二話術デ視線ヲ誘導シタ筈ナノ二……」
口調が変わった。やっと化けの皮が剥がれたか。
「その発言はあんたが人外だと認めたって事で良いな? じゃあ質問に答えてやろう。どこで俺が気付いたか、それは、俺とあんたが会う前からだ」
「何ダト⁉︎」
「あんたが俺の背後から話しかけてきた時、俺はずっと下を向いていた。もしあんたに影があったら、俺の視界に後ろから近づいてくる影が映ったはずだ。そしたらあんたに気付いたはずなんだよね」
ドォン‼︎と効果音が聞こえてきそうな程完璧な推理だ。
「......チッ」
爺さんの全身が壊れたアナログテレビの映像のように揺らいだ。
そこには人の善い爺さんはもう居なく、白いローブに身を包み、顔が完全に隠れる程の大きなフードを被った、一言で表すならばてるてる坊主みたいな奴がいた。
そして、杖を投げ捨て走り去ってしまった。
「あっ、おい! ちょっと待てよ‼︎」
俺は慌てて爺さんを追った。
細かい邪気の違いなど見なくても、影が無い時点で分かる。幽霊だ。
問答無用で駆除対象なのだ。逃さねーからな、爺さん!
「ねえ灰君、あれって影が無いから幽霊かなぁ?」
横から声が聞こえた。振り向かなくても誰だか分かるが、一応見てみる。
「何でついてきたんだ疾風宮。あと桃瀬も。……っておい!何でお前らついてきたんだよ‼︎」
ったくお前らは……はぁ……。
と、俺が少し目を離した隙に幽霊が目の前から消えた。
逃がすかよ。どこにいやがる。
俺は走りながら四方を見渡した。
視界の端で裏街道への曲がり角を全力で曲がりきった奴の背中を捉える。
俺は獲物を発見した狼が如く、奴を追いかけた。
伏線張るのって、難しいですね。
露骨過ぎてもつまらないし、かと言って分かりやす過ぎても読んでいて楽しめない。
ミステリー作家さんって、凄い。(小並感)
初めての推理系だったので、ちゃんとミステリーになっていたか不安です。
この回は感想大募集です。
これからの参考とさせていただきます。
好評だったらまたやるかもしれません。
(多分無いけど)




