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第11話/俺の背後に立つな!


「桃瀬さんハナダン見てるの?」


 すると、静かに聞き役に徹していた疾風宮が急に会話に入ってきた。


「見てるよ。もしやみどり君って恋愛ドラマ好きなの? ウッソ、可愛い!」


「へへ、まあね。母さんの影響で。それより次回から急展開だよね、楽しみだなー」


「そーそー! まさか許嫁が出てくるなんてね。はぁ、陰陽寺おんみょうじ君はどうなっちゃうんだろーなー」


「気になるよねぇ。僕としてはヒロインの月詠つくよちゃんと結ばれて欲しいけど……」


 ダメだ、会話に全くついて来れない。


 いや、仮について来れたとしても今の俺では会話に参加できないだろう。


 ずっと他人を避けてきた俺には、「3人以上で会話する」能力が欠落しているからだ。

 と言うか2人の時すらちゃんと会話できてるか怪しい。


 はぁ……。





 疾風宮と桃瀬が2人で喋りながら前に進むのを俺が後ろからついてくる構図になり、その結果俺が1人になるのにそう時間はかからなかった。







 視線が下を向く。影が見えた。



 後ろから慌ただしく抜かしていった自転車の影。



 楽しそうに話している親子の影。



 遥か頭上を覆い隠していく積乱雲の影。



 つまらなそうに俯く俺の影。





「あっ、いけない。灰のコトすっかり忘れてた」


「そう言えば。僕等から誘ったのにね。怒ってるかなぁ……」




 一緒に帰った人の事を完全に忘れていた非情な2人がようやく俺を思い出したみたいだ。




 * * *




「突然悪いね、兄ちゃん。ちょっと道を教えてくれないかのぅ」


「‼︎」


 突然真後ろから老人の声がした。


 頰を冷たい汗が流れる。


 この俺の背後を取った、だと……!


 この老人、出来る……!




 疾風宮にも昼に背後を取られているので全く説得力が無いが、そんな事気にしていられない。


 喉元まで出かかった叫び声を無理やり呑み込み、驚きで歪みそうな表情筋を全力で食い止める。


 錆びついた機械のようにぎこちなく首を回すと、右手で杖をつき、左手で決まり悪そうにハゲた頭を掻いている7、80歳辺りの爺さんがいた。


 左胸にワンポイントの刺繍が入っているだけのシンプルな白いポロシャツに、ポケットの付いていないスラックスの出で立ちだ。


 俺はこの爺さんに漠然とした違和感を覚えたが、その正体を掴むことはできなかった。


 まあいい。


 動揺を悟られないように、俺は自然な感じで爺さんに応えた。


「え、俺? え、 み、道、って、どこ? どこの? 」




 メッチャクチャ不自然じゃねーかよォォォ!

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