第10話/帰り道の解放感は異常
それから俺は5時間目の物理(自称文系)と、「他人に自分の歌声晒すくらいなら死を選ぶ」と消去法で選択した美術(得意ではない)に苦しめられ、すっかりボロボロになって帰りのH・Rを迎えた。
だがこの疲れもこれでもう帰れるなら癒されるってモンだ。
「起立、気をつけ、礼。さようならー」
この時を待っていた‼︎
俺はバッグを持ち、ギリギリ早歩きに見えないくらいの速さで教室を歩き去り、1番乗りで学校を出た。
やっほー。1番乗りだー。
束縛からの解放に、思わずニンマリする俺。
はぁ、帰ったらどう
「灰君、一緒に帰ろ」
気付いたら俺の隣に疾風宮がいた。
「うわっ! いつの間に……って言うかもう既に帰ってるよね。一緒に。ま、別にいーんだけど」
「わーい、帰ろ帰ろ!」
気付いたら桃瀬もいた。
「うわっ!」
* * *
「それでさー、そのドラマに出てくる俳優が超イケメンだって昼休み中みんなと話してたんだけどね。あっ、もしかして知らない?そのドラマ」
「知ってるぜ。ハガレンだろ」
「はぁー! 違うー! ハナダンだよ〜! 『花婿男子』!」
「あぅ……」
俺と疾風宮は桃瀬の雑談の相手をしながら駅までの道を歩いた。
誰かと一緒に帰るなんて久しぶりだな。
小学生の頃、桃瀬と帰った以来かな。
今みたいに桃瀬が一方的に喋って、俺はただ相槌打ったりしただけだったけど、よく愛想を尽かされなかったな。
今でも不思議に思う。
俺は昔を思い出してなんとなくしみじみした。
「え、桃瀬さんハナダン見てるの?」
すると、静かに聞き役に徹していた疾風宮が急に会話に入ってきた。
ハナダンとハガレンって似てるよね、って感じで書いただけのやり取りなので、ハナダンもハガレンも実はタイトル位しか知りません。




