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第8話/友達の友達は結局他人


 食堂の入り口にある自動販売機に小銭を投入し、缶のブラックコーヒーを買う。

「へぇ、ブラックコーヒーなんて飲むんだ。大人っぽいね」


 疾風宮が感心した目で俺を見る。


 俺は得意げに応えた。


「味はよく分からないけどカッコいいじゃん。炭酸飲むのもガキっぽいし」

「……子供っぽいね」

「何だと!」




 焼きそばパンは売り切れていたので泣く泣くコロッケパンを購入した。


 窓際の1列の席が2人分空いていたので荷物を置いて並んで座る。




「それでそれで、この後灰君はどうなったの?」

 疾風宮が興奮気味に目を輝かせて続きを促した。

 昼食を食べ終わり、特にやる事もないし食堂は空いているので暇つぶしに雑談中だ。


 まさか、犬頭人と戦ったことでこんなに熱く盛り上がってくれるなんて思いもしなかった。


 疾風宮は聞き上手なので俺も久し振りに(初めて?)他人と気持ちよく喋れて良い気分だ。


「ああ。奴らの数を活かした集団殺法に俺はこう、こうやって華麗に躱して全部の攻撃を無傷で受け流したんだ。奴等の戦い方、一体感があって面白いぞ。いつかお前も戦えると良いな」


「……僕も、強くなれるかな。灰君みたいに皆を守れるかな」

 ぽつりと疾風宮が呟いた。俺は微笑み、その疑問に答える。


「お前がそう信じて努力すれば、そのうちなれるさ」


 疾風宮は、「そーだね」と言い、笑ってくれた。


 励ましてやれたかな……。




「ねぇ灰君……あのさ」

 疾風宮が何か言いかけたその時、


「お? あれミヤじゃね? おーい」


 遠くから誰か、俺の知らない、疾風宮の知っている2人組が来た。


 1人は猿を連想させるようなスポーツ刈り。もう1人は頭にバンダナを巻いた美少年だ。


「あっ、ヒロト君、マーシー! 久し振り!」

 疾風宮が嬉しそうに立ち上がる。


「よおミヤ、相変わらず女みてーな顔してるなぁ! ハハハ!」

「そう言うヒロト君だって相変わらず猿面のままじゃないか!」

「近々会いに行こうと思ったんだけどさ、時間がなくて。でも元気そうで何よりだよ」

「マーシー、相変わらずバンダナだね……。クラスで不良キャラと間違われて浮いてない?」


 恐らく中学校の同級生だろう。疾風宮が楽しそうに話している。



 俺と話している時より楽しそうだ。



 出会って数日とは言え疾風宮の知らない一面を見て、俺はあいつを他人のように遠く感じた。


 いや、別に他人なんだけど。


 あいつが魔法の力を使うらしいから仕方なく付き合ってやってるだけなんだけど。


「友達」でもなんでもないんだけど。


 でも、


 でもそれだと、俺が感じている心の中のモヤモヤした嫉妬のような感情の説明がつかない。


「えっと、それじゃ灰君。今からこの人達と向こうで話さなきゃいけないんだけど一緒に来る?来ないか。なんかごめん。じゃ、あとでね」


 そう言い疾風宮は行ってしまった。友達の友達とか気まずすぎだろ。恐ろしい事を平気で提案しやがって。そんなコミュ力俺には無いぞ。


 

 あ、いや、別に疾風宮とは友達なんかじゃないんだけど。




 1人残った俺はコーヒーを飲み、缶を弄んだ。


 独りで飲むコーヒーは苦くも美味くもなく、ただ虚しかった。



ブルーハーツ、いいですよねぇ。


僕も中学時代ブルハの影響で、もともとあった創作系に加えてクール系、サブカル系、DQN系の4種類の中二病にかかりました。


今となっては良い思い出……な訳がない‼︎


恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい


忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ〜ッ

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