第5話/自称クールは他称無愛想
朝は慌ただしいが、電車に乗ってしまったら暇だ。やる事がないのでイヴァンと会話できるか試してみよう。俺は闇の魔法石に意識を集中させ、心の声で語りかける。
『もしもし、イヴァン・ライカンスロープ。聞こえますか』
無反応だったのでもう1度。
『もっしも〜し、イヴァン爺さ〜ん。聞〜てんのか〜? て〜か生きてんのか〜? お〜〜い。ったく、無視すんなよあの腐れジジイ』
『だ〜れが腐れジジイじゃクソガキ! こちとらもう一回実体化する為に力溜めとんのじゃボケナス!』
憎しみのこもった嗄れ声が聞こえた。会話成立。
『クソガキじゃねえ狼月灰だ! お前朝の意味深な独り言の説明しやがれ! 気になるじゃねーか!』
『それなら儂もジジイじゃなくて初代・狼男のイヴァン・ライカンスロープ様じゃ! お前それが人に話を聞く態度か!』
頭に嗄れ声がガンガン響いてものすごい頭痛がする。
寝不足の偏頭痛とは少し違う、脳が鳥に啄ばまれるような激痛だ。啄ばまれた事ないけど。
……ジジイ絶対何かしただろ。
『当然の報いじゃ! どうじゃ痛いか? ひゃひゃひゃ!』
『はぁ……ったくこのジジイは……。子供と同じ土俵に立って喧嘩して恥ずかしくないのかね……。まあいいや。お前と話してても疲れるだけだ。それより質問に答えてもらおうか』
『恥ずかしくなんかないやい! 何だ突然クールになりやがって、カッコいいとでも思っとんのか! お前なんてただの無愛想な根暗じゃバーカバーカ! この勘違い野郎め!』
『何だと!』




