第3話/家に知らない人がいるってかなりホラー
ピピピピピピピピ!
鳴り響く目覚まし時計が夢の世界にいた俺を無慈悲に現実世界に引き戻す。
(頼む、あと5分だけ)
もう少し夢の世界の住人でありたい俺は手探りで目覚まし時計を止めた。
(ふぅ……)
こんなやりとりをかれこれ4回はした気がするのだが果たして俺は大丈夫だろうか?
『おい起きろガキ! ……っつってもお前に儂の声は聞こえないんだっけな。まったく、最近の若造は“すまーとふぉん”だが何だか知らんがあんなもんに夢中になりやがって、夜遅くまで“げーむ”なんかするから朝起きられないんじゃろーが』
(ん、親父……? にしては声が嗄れているような……それに喋り方も変だ)
薄眼を開けるとそこには背が低く顔の彫りが深い、ボサボサの髪を肩まで伸ばし首には悪趣味な何かの骨のネックレスをした、とにかく変な小さい爺さんが座っていた。
「うわああああああああ‼︎ 誰だお前‼︎」
俺は布団を吹っ飛ばし寝起き史上過去最高の反応速度で跳ね起き絶叫した。
『お? もしやガキ、この儂が見えるのか?』
「見えるよ見たくねーよ誰だお前警察呼ぶぞ!」
『まぁまぁ落ち着け』
爺さんが一歩近づく。
「来るな!」
俺は反射的にフレイムナックルを繰り出した。
『落ち着かんかい‼︎』
拳が当たる直前、俺の視界が1回転し、その直後、俺は部屋の床に仰向けに倒れていた。
「ぐはっ!」
倒れた先が吹っ飛んだ布団だったので怪我はないが、背中を突き抜ける衝撃は俺の呼吸を停止させた。
『フレイムナックル、か。何百年経っても儂の技が受け継がれているようで何よりじゃ。もっとも、威力は全盛期の儂の方が数段上じゃがな』
「ジジイ……何モンだ」
こんなチビジジイがこの俺をあっさりと投げ飛ばすなんて、あり得ない。少なくとも人間じゃない。
『いや待てよ……ガキと儂が会話を成立している……これは、かなり“やばい”状況じゃないか?』
「何をブツブツ言っているんだ。質問に答えろ」
『考え事をしてるんじゃ、ちと黙れ』
「……あの、質問に答えて頂けませんか?」
スルーされ続けて心が折れた俺は思わず敬語になってしまった。
『名前か? 儂はイヴァン・ライカンスロープ。又の名を』
『初代・狼男』




