第9話/数学できない人達
ああ、鼻がムズムズする。誰か俺の噂してるな……。
「で、この問題を解くにはどうしたらいいの?」
「え? ああそれな。これはな……多分……かっこを外してなんか公式的なやつ使えば出来る。…………多分」
何だよこの問題。知らねーよ。て言うか俺大して勉強出来る訳でもないからな。
「灰君。全然解ける気配がしないのだが。ホントにこれで合ってるのかな?」
「知らねーよ。ワークの答えに解法とか詳しく載ってるからそれ見とけ」
ぐぬぬ……勉強では少し分が悪い。……そうだ!
俺はシャーペンをポイっと放り投げて、数学のワークをパタンと閉じた。
「おい疾風宮、魔法使いになって世界を救うんだろ。こんな所で数学なんかやってる場合かよ! どうせ勉強するなら魔法の勉強しようぜ!」
すると、疾風宮もシャーペンを放り投げた。
「すごく良い考えだね! 僕もちょうど同じ事を考えていたよ! こうしちゃいられない、早速出発だ‼︎」
疾風宮は素早くワークをしまい、スクールバッグから風の魔法石を取り出した。
「よおし。それじゃ、俺がいつも実戦魔法訓練で使う近くの裏山に行こう!」
俺達は変なテンションのまま逃げる様に部屋を出て靴を履き替えた。
実は二人とも数学が苦手で現実逃避の為に魔法の練習をしに行った、ってのは内緒だ。




