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第7話/沈黙の重圧


「ったく、しゃーねーな。そこら辺に座ってろ、コーヒーでも淹れてきてやるから」


「ココアが良いな」


「お前は女子か! 粉、まだあったかな……」


 一応希望は聞いてくれる。優しいな。




 フローリングにカーペットが敷かれた床に腰を下ろす。少し散らかった学習机に二段ベッド。本棚には漫画が大量に入っている。特にこれと言った特徴がない普通の部屋だが1人用にしては少し広すぎる気がする。


 ぶつぶつ言いながら去っていった灰君を待つ間、持って来た数学のワークを広げる。明日の小テストは落ちると補習+宿題というペナルティーが課せられるのでどうにかして回避したい。


 二秒ワークを眺めて飽きたので、灰君の本棚の漫画の品揃えでも見よう。




 と、部屋の外からてけてけてけと足音が聞こえてきた。


 灰君が帰ってきたのかな。


 ドアが開き、女の人が入ってきた。


「ふぃ〜、ただい」


 女の人と目が合う。


「……」


「あ……ども…………」


 腕をまくった白シャツに、色の濃いジーパンを穿き、腰まで届きそうな長い銀髪は無造作に後ろで結んでいる。


 灰君によく似た他人に心を開かなそうな冷めた目。おまけに美人。


 見た感じこの人は灰君のお姉さんでこの部屋は姉弟二人で使っているのだろう。


「あの、灰君のお姉さんですか?」


「……」


「あの……」


「……そうだけど」


「……」


「……」


「大学生、ですか?」


「……」


「……」


「………………」


「………………」


 さっきからお姉さんは“何だコイツ”みたいな目で僕を睨んでいる。黙ってないで喋った方が絶対明るく、可愛く見えるのに。


 もったいないな……。


 あと、少し気まずい。

 灰君、早く戻って来て……。

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