第17話/終わりの始まり
投稿サボった上、おもっクソ短くなってしまいました。いつもすみません。
「ふふ、分かってるよ。……お幸せにね」
ふざけたニヤけ顔で細められた瞳が、気のせいかも知れないが一瞬だけ悲しそうに伏せられた。……まぁ気のせいだよな。
「お幸せってどう言う意味だオイ。この口悪女と一緒にいてお幸せになれる程俺はマゾじゃないぞ」
「そ、そうだよアリスちゃん! 私もこんな世話焼ける中二病の相手したくないよ!」
ほぼ同時だった。
「原田事件」以降空いてしまった距離感を探る為に俺は軽口を放ち、変な噂が流れるのを危惧した桃瀬は俺を全否定、じゃなかった、山吹の発言を全否定。
山吹はそんな俺達を見て、ニコッと笑った。でもそれはからかいや滑稽さからではなく、今にも泣きだしてしまいそうな儚い笑顔だった。
この笑顔を見ていると、なんだろう、上手く言えないけど、胸が締め付けられるような痛みに襲われる。あまり感じたことのない感情。
「楽しそうじゃん……ワタシとなんかより。…………っ、じゃーね、桃ちゃん、ウルフマン!」
山吹は何やら口の中で呟き、最後はムリヤリ作ったいつもの笑顔で別れを告げた。そのまま校庭に走り出してしまう。
結局、山吹の小さな背中が校庭の人混みと混ざるまで見送ってしまった。
程なくして桃瀬は歩き出した。惰性で校庭をぼーっと見てた俺もそれに続く。
遠ざかる校庭の喧騒を聞き流していると、今頃この喧騒に山吹は混じっているだろうか、とか柄にもなく考えてしまった。
おもむろに桃瀬が口を開く。
「アリスちゃんってさ、もしや灰のこと好き、だったのかな……」
「そんなの俺に訊くな」
「あ、あはは、ごめん……」
好き。
日陰者の俺にはとんと縁がなかった種類の感情。心臓の高鳴りを覚えたが、すぐ横に桃瀬がいるからか謎の背徳感に苛まれた。
と言うか山吹が俺のこと好きと決まった訳じゃないんだけどさ。あくまで桃瀬の推測ね。
……気付いたら道には俺達二人しか歩いていなかった。今まで何とも感じなかった桃瀬と二人きりの空間が急に気まずい。
「…………ん」
気まずさを紛らわせる為に身をよじって息を漏らす。
身をよじり視線をずらしたからだろう、遠くの建物の屋上からこちらに弓を構える人影を発見したのは。
「――――ッ!」
感覚神経を通して脳に伝達されたその情報から瞬時に判断して運動神経に干渉するコンマ数秒。俺は反射的に、
――桃瀬に放たれた矢に手を伸ばす。
それも虚しく。
――ザシュッ!
放たれた矢は俺の手に擦ったため僅かに軌道を変えたものの、シャツの袖が捲られた桃瀬の左腕に一文字の傷を残した。
「痛っ!」
桃瀬は短く叫び腕を押さえる。
――やっちまった。
十中八九、魔闘結社の奴だ。ヴラドの一件以来すっかり鳴りを潜めてたから警戒心が鈍ってた。
魔闘結社が何も仕掛けて来ない訳がない。クソ、自分の甘さに改めて腹が立つ。
「桃瀬、悪い、ホント済まない……! 俺のせいでお前を……」
自己嫌悪で立ち尽くす俺に、桃瀬は「大丈夫だよ」と笑顔を見せる。
「自分を責めないで、灰。ほら、灰が助けてくれたおかげで私はかすり傷で済んだんだもん。それに、こんな傷ちょっと経てば」
「治らないよ」
桃瀬の励ましを遮る背後からの声。桃瀬を背中に庇いつつ振り返ると、ダブダブの緑パーカーを着込んだチビがいた。今期一番の陽気にパーカーを着て汗ひとつかかないことや、腰に提がったスペアの矢を仕舞うホルスターなんか見なくても、女子高生に矢を放つような奴は魔闘結社の奴以外にいない。
俺の束の間の平穏は唐突に崩れ去った。
紛糾する生贄会議 完




