表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/139

第11話/告白(いや、そー言う意味じゃなくて)

 

 それから少しして。


「あーあ、もう夜だよ。ママに何て言おうかな〜。まさか怪物に襲われて灰に助けてもらったとか口が裂けても絶対言えないし、てか信じてもらえないよね」


 すっかり普通の桃瀬に戻ったので安心する俺。


 そして、決心する。


「桃瀬、お前に言わなきゃいけない事がある。聞いて欲しい」


 桃瀬は帰り道を歩いていた足を止める。


「実は俺は狼男なんだ」


 もうこいつに隠し事はやめよう。


「俺の一族の間では闘いが絶えなくてな。そこに一般人を巻き込む訳にもいかないから幼い頃から『友達を作るな』と言い聞かされて来たんだ。だからお前にもわざと壁を作って生きてきた。今まで本当にごめん」


 でもさ、


「でもさ、これではっきりしただろ? 俺はマトモな人間じゃない。お前を殺そうとしたミノタウロスみたいな怪物と同類だ。もう二度とこんな目に遭いたくなかったら俺なんて放っておいて人間の友達を作れ」


「……関係ないよ」


 黙って聞いていた桃瀬が口を開いた。


「人間とか怪物とか全然関係ないよ。お好み焼きが好きな、強がりさんだけど寂しがり屋で、ちょっと面倒臭いけど頼りになる、私はそんな灰の事が」


 そう言うと桃瀬は黙って俯いた。少しばつが悪そうな顔をしている。何故そんな表情になるのかと、言いかけた言葉を最後まで聞くため、俺は特に何も考えずに質問した。


「何て言おうとしたんだ? 俺の事が何だって?」


 すると、桃瀬の顔が真っ赤になって、恥ずかしそうに俺を睨んだ。


「もう……意地悪言わないでよ……」


 え?


「……いや……何か気に障った事を俺が言ったなら謝る。だからそんなに顔を真っ赤にして怒らないでくれ」



「真っ赤」の所で桃瀬は「ひゃっ!」と両手で頰を押さえ顔を隠した。数秒後、我に返ったらしく、「こほん!」とわざとらしく咳払いをした。



「と、とにかく、そんな重大な秘密があるならもっと早めに言うべきじゃなかったのかな? 灰君」


 ぴっ、と細い指を俺に突きつけるが、別に動じない。


「誇り高き獣の一族は闇に生きる運命さだめなのさ……」


 父の受け売りをクールに決めたつもりだったが、桃瀬は吹き出した。


「きゃはははは何それ!また灰の『中二病』が発動したー! イタいイタいイタい‼︎」


「おいコラ、何度でも言ってやるが俺は中二病じゃない! その哀れみの目を止めろ!」


 今度は俺が真っ赤になって怒るが、桃瀬のからかいはヒートアップする。


「やーいやーい、中二病〜!」


「違〜〜う! 俺は、中二病、じゃ、ない!」


「あはっ、怒った怒った!」


 桃瀬は、止めてあった自転車に乗って走り出した。


「中二病〜! ここまでおいで〜!」


「チックショー、狼男舐めんなー!」




 逃げる桃瀬を必死になって追いかける俺。最初はお互いギャーギャー言っていたが、走っているうちにどうでもよくなりどちらともなく笑い出した。




 笑いながら走る俺達を月が優しく見守ってくれていた、とさ。

 



  苦悩する狼 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ