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第10話/闇の魔法


「実戦でこの力を使うのは初めてだな……。喜べ、記念すべき犠牲者第一号」


 言うが早いか俺は一瞬でミノタウロスとの間合いを詰め、勢いのままに飛び蹴りを食らわした。思いっきり吹き飛んだ奴の体が地につかないうちに俺は左の掌を向けた。


「ダークネスバレット!」


 掌から出た闇の弾丸がミノタウロスを貫く。

 ズシャア、と倒れたミノタウロスの頭を持ち上げ無理矢理立たせ、さっき俺にやったように渾身のアッパーを決める。


「ダークネスナックル!」


 ものすごい速さで天井に叩きつけられ、ミノタウロスは地に落ちた。


「ググ……。拳ノ重サモ速サモサッキマデトハ全ク違ウ」


 ミノタウロスが驚いているが、俺自身が1番驚いている。


「さてと、そろそろ終わらせるか」


 そう言い俺は右手と左手を前に突き出す。そして、左手で右手を押さえる。


「フン。右腕ノ炎は全ク使イ物ニナラナイノニ、ドウシヨウッテンダ」


 分かってないな、闇と炎は相性抜群。今の俺の状態でも十分お前を倒せる。


「闇の炎に抱かれて消えろ! 『ダークネスフレイム』!」


「ヤメロォォォォォォ!」


「うるせー!」


 右手から漆黒の炎が解き放たれ、ミノタウロスを地獄へといざなった。


「オ、俺様ガコンナ餓鬼ニ……」


 ミノタウロスの体が徐々に細かい砂の様に変化し、風に吹かれて空に消えていく。


「今までの罪、死んで償え」


 俺はそう吐き捨てると遠くでへたりこんでいる桃瀬に歩み寄った。


「大丈夫か、桃瀬」


 桃瀬を縛っていた鎖を引き千切ると、桃瀬は力尽きた様子で俺に寄り掛かってきた。


「遅いよ……馬鹿」


「は、はぁ? 助けに来てやったのに何その口の利き方? 酷くない?」


 思いもよらないリアクションに滅茶苦茶戸惑った俺に桃瀬はひしっと抱きついてきた。


 間近に感じる桃瀬の体温。


 身体の柔らかさ。


 ぎゅうっと肩に顔をうずめる。


 微かに吐息がかかる。


「お……おい。やめろよ、放せ」


 こうしてからかって俺の反応を見て楽しんでるんだろう、と思い桃瀬の顔を見ると、くすんくすんと静かに泣いていた。


「……ありがとう、灰」


 こういうパターンの扱いに慣れていない俺は、取り敢えず桃瀬の気が済むまで抱きつかれてやった。


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