第1話/憂鬱な桜道
他人を戦いに巻き込まない為、周囲に壁を作り、望まぬ孤独に生きる主人公。
だが、そんな彼を複雑な思いで見る幼馴染みがいて……。
みたいな感じです。
「えーと、じゃあ次の人、前に出て自己紹介してください」
入学式後にすることといえば、まあ自己紹介といったところか。俺は予め用意しておいた言葉を言うために席を立った。
首に下げた大きな黒のネックレスがじゃらりと音を立てた。ブレザーの下に着込んだ灰色のパーカーを担任の教師が露骨に煙たそうな目で見ている。
ここでも生活指導部と戦争になりそうだ。
「名前は、狼月 灰。趣味は漫画鑑賞。特技は、特にない。一年間世話になる。あと、」
そういって一呼吸おく。
「俺に関わるな」
こんなもんだろう。俺は席につく。周りの奴らはビビってこっちを見ようともしない。
まぁ良いけど。
俺、高校でも友達とか作る予定無いし。むしろこの方が都合が良い。
同じ過ちを二度も繰り返す訳にはいかないんでね。
そんな事を一人考えていると、隣の奴に二の腕を突っつかれた。
「ねえねえ灰ー。また同じクラスになったね。もう灰の顔見るの飽きたよ……。全く、この腐れ縁はいつまで続くんだろーね」
「桃瀬……」
こいつは桃瀬 麗華。
小学生の頃からずっと学級委員で、クラスのマドンナ的存在にして成績は常にクラス五位以内。何でもできて、クラスカーストの頂点、俺とは雲泥の差という表現すら生温い、リア充の座に君臨する。
本来ならば俺みたいなぼっちが最も忌み嫌うべき存在なのだが、幼稚園からのいわゆる幼馴染みってヤツで、気付けばいつも一緒にいたから俺としても不本意ながら憎からず思ってしまうのが正直な所だ。
「相変わらず灰はイタいねー。中学校の自己紹介でも似たような事言ってたよ。最近ネットで見たんだけど、そういうの“中二病”って言うんだってー」
「や、やめろ。俺は中二病なんk」
「数年後に思い出して死ぬ程恥ずかしくなるらしいよ。フフ、楽しみだなぁ〜」
ちなみに中二病とは、思春期を迎えた中学二年生にありがちな、痛々しい言動の総称である。
例えば「友達いない一匹狼の自分カッケー!」とか、「社会に対して斜に構えてるクールな自分カッケー!」とか、「闇の力を左腕に封印してる自分カッケー!」とか本気で思ってしまって、更にそれを実行してしまう人達の事である。おい誰だ「それお前の事じゃねーか」って言ったの。
……俺がここまで詳しいのは、たまたまどこかで見知っただけで、別にそう言うのに興味があったからではない。もっと言うと俺は中二病ではない。絶対。
はぁ、こんな奴が隣の席だなんて……俺の平和な高校ライフが……。
うろたえる俺を見てきゃはははと桃瀬が大笑いしている。
そのやり取りを見ていた周りの奴らもはじめはポカンとしていたが次第に笑い始めた。にやにやしながらこっちを見るな桃瀬コノヤロー。
全く、こいつといると調子が狂う。
この小説を読んでくれてありがとうございます!
色々と拙い部分もあると思います。
ですが、僕も小説の書き方などを勉強して日々成長していこうと思います。
最期までお付き合いしていただけたらとっても嬉しいです‼︎