第五話
付き合って一年。
マンネリ化する時期なのに、あたしと和俊はほとんど変わらなかった。
いつも通り…もともと全然“ラブラブ”なんかじゃなかったけど。
なかったからかな。
とにかく会う回数も、遊ぶ内容も、キスもそれ以上も、最初の頃とあんまり変わりはなかった。
そう、その日も、いつもと同じようにデートして。
「じゃあな、来週の日曜日、バイクで迎えに来るから。」
「どこいくの?」
「まぁまぁ、行ってからのお楽しみー。」
「なにそれー。」
いつものようにあたしを送ってくれて。
いつものように次の約束をする。
「またな。」
これもおんなじセリフ。
和俊がバイクにまたがって、あたしの家から離れてく。
それをあたしは別に手を振るわけでもなく見送った。
ただ小さく笑って。
『またな』
次がある そんなの 当たり前だったから。
『どこいくの?』
『まぁまぁ、行ってからのお楽しみー。』
どこ、連れてってくれるんだろ。
次の日曜日。
四日後かぁ。
楽しみ だな。
次の約束に思い馳せて、家に入ってただいまって言った。
何の予感もなかったんだ。
あまりにいつも通りすぎて。
せめて彼女として、マンガとかドラマみたいに、嫌な予感くらい感じられてれば良かったのに。
和俊が 事故にあったのはその帰り道。
バイク事故。
何 やってんの。
どうしよ…。
「三村和俊の病室はどこですか!?」
大丈夫だよって、鈴木君が言ってたんだ。
和俊の親友。
連絡をくれた時に鈴木君が言ってたから、大丈夫だと思ってた。
「今手術中です。」
和俊。
和俊。
手術だって、何やってんの。
大丈夫だよね?
きっと腕かなんか怪我しただけで、縫ってるんだよ今。
案外無償かも。
検査の手術とか。
バカな考えを、自分に言い聞かせることで立っていた。
和俊の手術室の前で。
鈴木君と神田君がいてくれなかったら倒れてたかもしれないけど。
二人はあたしをなだめるように傍にいてくれた。
ずっとずっと一緒にいた分、もしかしたらあたしよりも心配かもしれないのに。
ううん、でも和俊。
あたしは和俊が世界一好きだから、本当に本当に苦しかったよ。
大好きで だから いなくなったりしないで。