第三話
「なぁ、何の映画見たい?」
時々どっちかの部屋で、他愛ない話をした。
思い出したようにじゃれ合っては、求め合ったこともある。
「んー、今何やってんの?」
「なんかイルカのやつとか戦争のやつとかー、あと美少女戦士のアニメ映画とかー。」
「ぜんぜん分んない。」
あの時は和俊の部屋で、あたしは雑誌読みながら、和俊はインターネットで映画検索しながら。
「ヒーローのもあるけど。」
「どんなの?」
「なんか男が世界救ってくやつじゃねぇ?ヒーローものだし。」
「適当だねー。」
「なに、興味ある?」
別にー。
ただ美少女戦士よりは良いかなって思っただけ。
「ヒーローとか好きなの?」
「んー、嫌いじゃないよ。」
「意外!ヒーローとか王子様とか大ッ好きなんだ!」
「そこまで言ってないよ!」
実際、ヒーローとか王子様なんて信じらんないし。
和俊はなぜかツボにはまったらしく、笑うだけ笑って本当に意外そうにあたしを見た。
なんだよ、バカにしてんのか。
あたしはふくれっ面になりながら、和俊をジトッと睨んだ。
なのに和俊は楽しそうな顔でこっちを向いて。
自信あり気に笑顔を浮かべながら。
「じゃあ俺は、ヒーローになる。」
寒い!
って、今なら思うんだけど。
その時は感動してた。
ずるいって思った。
サッカーだったらレッドカードだ。
ずるい かっこよすぎて 反則だ。
この恋は 手放せなかった。
表現豊かじゃないあたしは、告られたあの日しか好きだって言えなかったけど。
どこにでもあるこの恋は だけど彼は たった一人のヒーローだった。