第二話
それから半年。
倦怠期も修羅場もあったし、喧嘩もいっぱいしたけど、離れ離れにはならなかった。
「香澄!カラオケ行こー!」
電話やメールをくれるのは、付き合う前も付き合ってからもいつも和俊の方だった。
あたしは戸惑ってばかりで、自分はこんなにも恋愛下手だったかと思う。
もっと上手く やって来たつもりだったなのにな。
「へ!?昨日鈴木君と神田君と行ったって言ってたじゃん。」
「俺三日続きでも行けるー!」
「えぇえ…。」
「それに昨日は喋ってばっかりで全然歌ってねーんだ。」
あたしと行ってもそんなに歌わないじゃん。
いっつも学校の話とか鈴木君と神田君の話とか…まぁたまに恋人らしーことしたりとか。
「ほんとに仲いいねー、いっつも三人だし。」
「ずっと親友やってっからなぁー、思えばこんなに続くのもすげぇな。」
「好きなんだね。」
鈴木君とも神田君とも面識はあった。
鈴木君は結構気が合ってよく喋ってたし。
神田君は人付き合いが苦手なのか、それともあたしを良く思ってないのか、ちょっと怖い印象だった。
「好きって!もぉ何ゆうのあんたー!!」
「ええ!?別にそうゆー意味じゃないよ!?」
「ぎゃはは!分かったんよ!」
「もー。」
「うん、まー…好きだから一緒にいるんだろーな、一緒にいたら楽だし。」
あたしが和俊に聞かされるのは、いつもクラスの話題か親のことか。
あとは、“耕介”にバカにされたーとか、“裕弥”はどんくさいんだーとか。
そんなのばっかで。
「あ!でも耕介は油断ならねぇけどな!!」
「う…。」
和俊は単純なくせに、妙なところで根に持つタイプだ。
あたしは鈴木君と二人きりで会ったことがあった。
別に、偶然だったし何か下心があったわけでもないんだけど。
それを知った和俊は結構怒った。
「ははッ、別にもーいいんだけど。今考えたら俺って心せま!って思うし。」
「ああ確かにねー。」
「こらァどの口が言うかー!」
「やー!」
和俊と話す 一つ一つの言葉が楽しかった。
下らない喧嘩もいっぱいしたし、別れ話が出そうになったこともあるけど。
それでもやって来れたのは、この楽しい瞬間があるから。
「香澄昼何食べたい?やっぱハンバーガーとポテトだよな、うん。」
「えー、最近ずっとマックじゃん!」
「こら、我儘言うんじゃありません!」
「なにそれ。」
「お母さまー。」
「じゃあもっと栄養考えてよっ。」
「あははっ!」
ケラケラ笑う、和俊。
カラオケや映画、ボーリング。
付き合う前もやってたことばかり繰り返し、何も変わらなかった。
半年前も今も 変わったのは 恋人っていう肩書き。