【閑話】その時彼らの足下では (前編)
※注意! 芋虫が出てきます!
僕は芋虫です。
毎日、毎日。
ちょっとずつ、ちょっとずつ。
大きくなるために葉っぱを食べています。
僕は芋虫です。
……そのはずです。
そのはず、なんだけど……。
この間、不思議な雨に当たってから何だか変なんです。
食べても、食べても、お腹がすきます。
毎日、毎日。
ちょっとずつ、ちょっとずつ。
だんだん葉っぱを食べる量が増えていきます。
食べるものを探しに別の所へ行きたいけど……。
この頃ずっと雨が降っていて、動くことができません。
葉っぱが雨で溶けて行きます。
お腹がすきました。
もう、食べるものがありません。
人間に拾われたみたいです。
たくさんの葉っぱがもらえます。
毎日、毎日。
たくさん、たくさん。
人間は、お腹がいっぱいになった僕を抱えて、いつも寝ています。
僕がむにむにで気持ち良いんだって。
……。
羽化したら、むにむにじゃなくなって、捨てられるかもっ?!
どうしよう、どうしよう。
とりあえず、蛹にならないように、動かなくちゃいけません。
この世界では、神獣や幻獣と呼ばれる力ある獣たちの体液を浴びると、自身の願いが叶うと言われています。
ただし、当の獣から負の感情を抱かれていた場合、どこかのお伽噺の娘を金の像にしてしまった王様みたいなことになります。
体液は、量、種類、浴びた場所によって叶う願いの深度が変わります。