蛇の話
僕は蛇です。
小さな白い蛇。
卵から孵ったばかりのところを拾われました。
とても運が良かったです。
なぜなら、僕の皮を目当てのはんたーがすぐ近くまで来ていたからです。
「あぁ、もふもふ。やっぱりもふもふは正義だよね」
僕を拾った人間は獣の毛皮が好きみたいです。
「あぁ、たまんない~。うふふふふ」
……。
違った。
ものすごく、好きみたいです。
僕は蛇です。
小さな白い蛇。
毛皮はありません。
皮はあるけど……。
僕も時々撫でられます。
でも、少し触ったらもうおしまい。
『やっぱり、ひんやりしてるね』とは言われたけど……。
蛇は大きくなるとき、脱皮するそうです。
大きくなったら、毛皮が生えるかな?と思っていたら……蛇はずっと蛇のままなんだって。
……。
だって、芋虫だって蝶々になるでしょ?
芋虫があんなにヒラヒラになるんだよ。
僕も姿が変わるのかな?って思ってたの。
今日は、すごいこと聞いちゃいました!!
この世界の生き物は、ものすごく頑張って魂の力?を貯めたら進化って言うのが起きるそうです。
ものすごくってどのくらいだろ?
僕にも毛皮ができるかも?
そうしたら……。
『うふふふ。お前のもふもふがやっぱり一番だね』
頑張ります。
あれから何年も経ちました。まだ進化は起きません。
脱皮は2回したけど、蛇のままです。
あとどのくらい頑張ったらいいのかな?
僕はどうやら、普通の蛇じゃなかったみたいです。
魔法が少し使えるようになりました。
たまに普通の蛇に会うこともあるけど、何を言ってるか全然分かりません。
人間の言葉は分かるのにね。
「もふもふを傷つけるのは許さんっ」
今日も人間のお手伝いで、襲ってきた魔獣に向かってぴかっ、と目潰しをしました。
その隙に、目が見えない魔獣に向かって人間が腕を振り上げました。
あっっ。
……僕は、魔法を使うために、頭を少し人間の腕から離していました。
いつもはちゃんと巻き付いていたのに。巻き付いていた腕を振るわれて、僕は魔獣に向かって飛んで行きます。
でも、だって、まだ毛皮が。
そろそろ、と目を明けます。
僕はまだ、生きてるみたいです。
あれ?
何か変です。
でも、何が変なのか分かりません。
おや?
人間が小さくなっています。
もしかして、さっきの魔獣は呪法が使えたんでしょうか?
「竜だとっ」
えっ。竜!?
どこ?どこにいるの?
竜とは伝説の生き物で、ものすごく大きくて、強くて、魔法もたくさん使えて、とっても長生きなんだって。
竜は僕でした。
僕は竜になっていました。
人間が小さくなったんじゃなくて、僕が大きくなっていたんです。
……。
僕は蛇でした。
小さな白い蛇。
でも、今は竜です。
蛇のときは白くて、丈夫だけど柔らかい皮でした。
でも今は同じ白でも、固そうな鱗。
……。
もしかしたら、どこかに毛皮があるかもしれません。
ありました!
頭の後ろにたてがみ?がついてました。
これなら……。
だめでした。
たてがみを人間に向けようとしても、頭の角が邪魔をします。
後ろ向きだと尻尾が……。
前は小さかったから良かったですが、今は大きくなってしまったので人間の手が届きません。
一生懸命話してみましたが、全然通じません。
伏せをしてみましたが、人間は近づいて来ません。
……。
あれ?
人間が冷たっと言っています。
雨も降っていないのに?
あれあれ?
僕の目から水が出て来ました。
どうしたんでしょうか。