表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

魔法少女、働く

「……事前にはっきり言葉で言われた調査で簡単なのは大体終わっちゃったなぁ……」


 文化レベル。思考パターンの根底にある物。精神水準。社会制度。戦闘力。生態系。僕が思い付く範囲において、必要最低限と称された調査は終わってしまった。ここからは【魔神大帝】様がこの世界に来た時にお勧めするべき点を僕の目によって探し、見つける必要がある。


(……でもなぁ……流石第1世界の魔導世界。僕でも行ったら殺されそうなところがたくさんあるからきちんと調査は難しそうなんだよね……)


 死ぬと新しい人材などを派遣しないといけないと言う迷惑をかけてしまうので極力そのような可能性は排除しておくとして【魔神大帝】様の身近な興味を惹けそうな点を考える。


(……不倫現場とか? 【魔神大帝】様、余所の恋愛事で遊ぶの好きだし……何だか難しそうな恋物語が集まりそうな場所も考えておこうかなぁ……)


 魔力による単為生殖が出来る【魔神大帝】が恋愛感情を持つことはないが、他者の睦言への介入という悪魔的な楽しさを持つ遊戯は好む。後で情報を仕入れることにしてマキは情報を仕入れるための場所ということを考えて思い出した。


「あ、冒険者になったんだった。ある程度情報を手に入れるためにも外に出て働くかなぁ……」


 そうと決まれば移動開始だ。開いていた予定表を確認し、そう言えば呪いも解かないとと思いつつ手帳を閉じて席を立つとこの前パーティを組んで号泣した平民のニースフェリアが人目を気にしながらこちらにやって来た。


「そ、そろそろ活動を……」

「あぁうん。今日から行こうと思ってた所。」

「頑張ります。」


 お供を手に入れてマキは学園内の冒険者相互組合の事務所へ移動する。途中で様々な人から視線を浴びるが気にすることもなく二人は基本的に無言でその場所に着いた。


(……何か見たことある顔が上に並んでる。)


 新着の依頼のクエストクリア上位者の所にマキは道案内の人ことこの中央学園が所在する人間の王子であるマリウスとその宰相であるチャラ男ことクリスの首から上の写真を発見してその記録を覚える。


(まぁ、負けらんないよね。【魔神大帝】様が一番だし。……問題は詠唱が何かもうダメダメになってることだけど……最悪徒手空拳で滅ぼせばいい!)


 そう決意したマキは依頼を受ける。内容は群れ全体が成長すれば天災レベルの厄災を招くキリングホッパーというイナゴの化物のような相手の幼生を殺しまくるお仕事だ。そんな仕事を受けると言うことで受け付けの人はマキを見て心配する眼で尋ねてきた。


「……女の子だけど大丈夫なの?」

「んー……まぁ、多分大丈夫です!」


 正直、巨大な虫はあまり得意ではなかったが討伐に関しては1匹からでも報酬が入るので受けてみることにし、その旨を後ろで待機しているニースフェリアに視線で確認して受諾を受ける。


「それでは、頑張ってください。」

「はーい。行って来まーす。」


 ニースフェリアを伴い、ワープゲートをくぐって一瞬で移動先へと飛んで行く。そこには早速柴犬ほどもある巨大なバッタがいて思わずマキは退いた。


「僕に任せてください!」

「複眼がキモい……」


 ぼこぼこしている目が蠢いてこちらを向いている。ぞわぞわするようなブラシがついた触覚も忙しなく動いている。マキは素手は絶対に嫌だと早速一匹倒していたニースフェリアに魔術で武器の製造を頼む。


「刃の付いた手甲と足甲作れる?」

「……こんな感じでどうですか?」


 魔導世界エクセラールにおいて魔法や魔術、その他の術式で戦わずに肉体を使うと言うのはかなり変であるが、マキは貴族であるのに平民と組むくらいの変わり者だからそれくらいはあり得るのかもなと思いつつニースフェリアは武器を差し出す。

 それを受け取って身に着けたマキは軽く手足を動かして動作不良がないかなどを確認し、頷いた。


「うん。……あれ? どうかした?」

「いや、スカートが、その、気を付けた方が……」

「あぁ、そう言えばそうだったね。まぁ仕方ないよ。」


 仕方ないで済まされる問題ではないとニースフェリアは顔を赤くして目を逸らす。ニースフェリアが言及したのは下だけだったが、その目はしっかりと揺れる胸にも行ってしまい、何かもうやり場のない衝動に襲われたニースフェリアは魔術を駆使して周囲のキリングホッパーを補足し、狩っていく。


「おぉ~! 僕も頑張らないと!」

「これくらいは僕にやらせてくださいっ! ですからスカートがぁっ!」

「誰も見てないんだしいいじゃん。しかもちゃんとパンツ履いてるんだし。」

「そう言う問題じゃないぃっ! いいですか!? あなたガードが緩すぎるの!」


 何で説教されてるんだろと思いつつマキは手足に氣を通わせてキリングホッパーを両断するために蹴り上げ……ようとして、先に石の弾丸がバッタの頭を貫いた。


「だ・か・らぁっ! あのですね。足を上げるのであればスパッツを履くとか、魔術を先に付与しておくとか他にやるべきことがあるじゃないのかな!」

「……そういうものかな。何か自意識過剰みたいで……」

「してください! あなたは過剰なくらいで丁度いい! あなたが買いたくないなら今回の僕の報酬を全て受け取ってスパッツを買うなりしてください、お願いします!」


 野外と言うのに見事な土下座だった。感心したマキはニースフェリアの言う通りにスパッツを買うことになるが、履いたからいいだろとその白い太腿を無造作に晒すことはやめなかったのでニースフェリアは戦闘的な意味ではなくて日常的な意味でもマキを守らねばと強く誓うことになる。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ