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魔法少女、知らない間にロックオンされる

「オイ! マリウス! 何そんなに上機嫌にしてんだ?」

「……クリスですか。この部屋に関係者以外を入れるなと何度言えば……」


 僕が生徒会の仕事をしていると深い赤色の長い髪を爽やかなイメージになるように軽く固めた男がいつもの様に女性を侍らせて生徒会室に入って来た。


 僕からして見ても整っていると思えるその顔、耳には魔道具のピアスがつけられており、その体は魔導師なのに鍛えすぎて鋼と化している細身の男。彼はこの国の宰相の第一子。クリス・フォン・ミカナールだ。


 クリスは僕の注意を受け、仕方なさそうに今日も女性を帰していった。そしてこの生徒会の彼にあてがわれた席に乱雑に腰を下ろす。


「マリウス相変わらずかってぇなぁ? いい加減許せっての。」


 そしていつもの様に文句を言ってきた。だから僕はそれにいつもの様に返す。


「風紀が乱れる。風紀が乱れれば後は自ずから理解できるでしょう?」

「へいへい。今日は何か機嫌がよさそうだからイケると思ったんだけどなぁ~……で? 何があったんだよ?」


 僕の注意にもいつもの答えが返ってくる……そのやり取りが終わるといつもの様に僕は黙って作業を進める。そんな僕に彼の甘いマスクと評される猫目を愉悦に染めて鬱陶しく絡んでくるクリス。


 何かあったと言っても僕には誰かに話す必要性を感じるほどに嬉しいことがあったわけじゃない。


 鬱陶しいクリスを排除する時の目を向けてやる。いつもならばこれで諦める……のですがね。今日の奴はしつこかった。


「俺には分かるぞ? お・ん・な。の匂いがするからなぁ~?」

「気持ち悪いですね。」


 こいつの鼻の良さは何でしょう? 風魔法使いなら分かりますが……こいつの属性は火です。


 そんなことを思っている僕の前で彼は匂い分析を続けています。気持ちの悪い……


「ん~……少なくともここ最近まで作られた香水じゃ嗅いだことのない匂いだな……体臭か?」

「気持ち悪いですよ? 口を動かしてないでさっさと自分の仕事を済ませたらどうですか?」

「もう終わってるよん。」


 相変わらずの彼に僕は自分の仕事の一端を押し付けます。


「これを今日中にやり終えたら教えましょう。」


 大量の書類。学園のイベントだけでなく、俺が王国で器量を試されるために任されている仕事の書類も混ぜてあります。


 こういった膨大な仕事をやってほしいと言えば女性との時間が無くなると言って退散して……


「おっけ~任せろ♪」

「なっ……」

「代わりに、教えてもらうぜ~?」


 退散しなかった。驚きです……まぁ良いとしましょう。終れば、と言う但し書き付きなので。


 それに取り立てて特筆することでもないので、そこまで秘匿することでもないですし……




 そんなことを考えて作業をしているとクリスの方はすぐに仕事を終わらせました。秘匿するほどのことでもないですが公表したいという気分でもない僕は更に僕の仕事を押し付けてみます。


「……おい、女の話は?」

「これを今日中に終わらせたら、と僕は言いましたよね? これは僕の仕事全体のことを言っているのですよ?」

「んだよ往生際の悪ぃ奴……まぁ終わらせて聞いてやるけどな!」


 ……何が彼をそこまで駆り立てるというのか……ですがこんな時の彼は有言実行。本当に終わらせます。


「……フィーっ。終わったぜ?」


 にやりと笑って見せるクリス。その妖しい笑みは幾人もの女性を魅了してきたのでしょうね。


 ……これ、この話をクリスにすると彼女が危ないんじゃ……?


「さぁ、聞かせてもらおうか。……王子ともあろう方が嘘はつかねぇよな?」

「……仕方ありませんね……」


 何かあれば僕の責任という事で、彼女を全力で守りましょう。自分で種を蒔いておきながら申し訳ないですが。


「……この学校に季節外れの転校生が来たんですよ……」



















「……クック。面白れぇこともあるもんだな……」


 俺は生徒会室を出ると、笑みを隠しきれずに口の端を歪め、そう呟いた。


 マリウス・リューガ・ディラン。言わずと知れたこの国の第2王子にして氷の美貌を持つこの学校の生徒会長様だ。


 その冷たく、美しい顔はこの学校の多くの女子生徒を魅了してきた。それにその圧倒的な身分は男子生徒を多く惹きつけた。


 しかし、それを顔や身分だけを見て近付いて来るものだと分かり切っているマリウスはこの学校の生徒を無意識中に嫌い、基本俺以外に話をしない。


 そんな彼が、気になる異性がいるというのだ。興味が出ないわけがない。


(どんな奴か見に行かねぇとな。マキとかいった小柄な少女か……)


 仮にも友人だ。その女が変な奴だったとしたら俺が弾き飛ばしてやろう。


「まぁ半分くらいは興味本位だけどな。さってさて……じゃアーデルちゃんにどのクラスか訊き出しときましょうか。」


 アーデルちゃんはこの学校の最年少の女魔導師の先生だ。俺と同じく主に火属性の魔法を使う研究肌の女性で押しに弱い。俺が聞けばすぐに教えてくれるだろう。


 そんなことを考えながらクリスは生徒会室を後にして職員室へと向かって行った。




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