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魔法少女、学校に行く

「……はぁ。」


 口を開けば溜息だけ。ヘルプ機能に色んな情報が出てたけどどれもムカつく。……でもとりあえずゲームクリアのためには魔法学校に通わないといけないとのことです。

 理由は魔王は僕が一人で行っても勝てる相手じゃないという事。その為、魔法学校でパーティーを結成すべしだそうです。


 ……でも女の子として学校に入学って……ハードルが高い。僕も一応男として育てられたので興味がないわけじゃないけど、そんな感情よりも困るという方が……


「……着いちゃったなぁ……」


 いつもの声とはまるで違う幼い声が僕の口から零れ出る。結構可愛い声だけど自分の声だと何にも嬉しくない。

 書類手続きについてはユルティムのアホが済ませているらしいので僕がやるのは実技だけだ。


(……はぁ、本っ気で気が進まない……でもなぁ……【魔神大帝】様がここに来た時の為に入念な下調べをしておきたいし。その為にはあのアホのいう事をこなしておいた方がいいよね……)


 僕は溜息交じりに事務の方に向かい、書類とは別に実技試験を受ける必要があるためその手続きをしに行った。


「わぷっ……」

「っと。」


 そしたら何かにぶつかった。いつもなら魔法で身の回りに危険や遮蔽物があれば分かるようにしていたのに今は術をかけてないので反応が何もなかったから全く気付けなかった。


「ご……ごめん。」

「いえ。こちらこそ……」


 そこに居たのは長身のすらっとした美青年だった。(勿論【魔神大帝】様には及ばない……けど、同性だった意識を持つ僕ですらまぶしさのあまり気後れするレベルだ。)

 髪の色は深い青。少し鋭い切れ長の釣り目で怜悧な印象を与えるキリッとした鼻立ち。全体的にクールな印象を受けるその人を見て僕は思った。


(……髪にまで影響が出るほどの魔力持ちなんだなぁ……多分水かな? 何か氷みたいな印象だから似合ってるなぁ……僕も魔法の影響が外見に出てたらこんなことになってなかったと思うと何か不平等だよね。知ってたけど……)


 この世は不条理だということは知ってる。僕の扱う魔法を外見に反応させれば格好良くなると思うんだけどね……何かこう想像は上手くできないけど、バーンっと。


「……どうしました? 君は……とりあえずうちの学生ではなさそうですね……」

「あ、はい。編入の手続きに来てたんです。」


 少し考え事をしていたら訝しげに思ったらしいその人が声をかけてきた。僕は用件を伝えてさよならしようとする……いや、したんだけど。


「ふむ。書類受付はここじゃないですよ? 案内しましょうか? 校内は広い上に生徒管理を行っている事務室は少しわかりにくい所にあると思うので……」


(ん~……別に案内が無くても今さっき地図見たから大丈夫だけどなぁ……まぁ親切にしてくれるものを断るべきじゃないよね?)


 それに関連して思い出すことがある。


 【魔神大帝】様は方向音痴だったから僕ら四天王の地図を読み解く能力は自然と長けているようになった。だから地図を見ればどこに行けばいいのか分かるし、案内される必要もないと考える。


 尤も【魔神大帝】様はやろうと思われれば何でも出来る方だったからやる気がなかっただけの事だろうと思うけど……そのお蔭で僕らは色んな所に付いて行けたから方向音痴でよかった。とよく思ってたね。


 長々と【魔神大帝】様のことを思い出して沈黙していたけどその人はずっと目の前にいた。


「じゃあお願いします。」

「はい。」


 その人は僕を案内してくれることになった。



















 何か話が長い人だった。僕は適当に相槌を打ってさくさく(女の子の体の割にだけど)進んでさっさと別れるつもりだ。

 そんな感じで進んでいると不意に話題を変えられた。


「……それにしてもあなたは珍しいですね。」

「はい?」


 この人は結構失礼だなぁ……人をなんか珍しいとか言って……それにしても遠いなぁこの学校作った人馬鹿なのかな? もう10分くらい歩いた気がするけど。


「僕の顔を見たことないんですか?」

「はい。」


 その人が顔を近づけてきました。急接近で何か鼻と鼻がぶつかりそうな距離です。完全に油断してましたね……まぁ敵意がないので反応が薄かったのもありますし大丈夫だと思いますけど……


 そんな接近状態でポケっとしていると彼は笑いました。冬の合間に差し込む陽光のような柔らかい笑み。


「フフ……そうですか。」

「はい。」


 あ、何か良い匂いがする。シトラスかなぁ? そんな感じ。あぁ……【魔神大帝】様の不思議な香りが懐かしいなぁ……近付くと嫌がられるからあんまりくっ付けないんだけどたまぁに機嫌がいいとくっ付かせてくれたのを思い出す……


「それでは、出来ればこの先、僕のことを知っても変わらない君でいてくれることを願っています。僕はマリウス。マリウス・リューガ・ディランです。何かあれば生徒会に来てくださいね。」

「あ、どうも。僕は……じゃなくて、私はマキ?」

「……何故疑問形なんですか?」

「あ~……」


 書類に書いてある名前に違和感があるからです。とは言えないので愛想笑いでごまかしておいた。大体のことは誤魔化せるから笑顔っていいよね!


 それはともかく、僕はさっさとお別れしてテストを受けてみた。……結果は……小規模の【魔術】なら辛うじて詠唱が短かったから変な詠唱せずに済んだけど……


「……あなた、特待生クラスに中途入学するんですよね? その程度では……」

「うぅ~……」


 一応【重ね魔術】とか技術点は合格だったんだけど……うぅ~っ……魔力保有量からして手を抜いてると思われてるし……あぅ~っ! い! や! だ! ……魔神軍の幹部なんだよ僕。こんなふざけた詠唱なんてしたくない~!


「……はぁ……やる気がないなら……入学は認められませんが?」


 ……別に最悪ユルティムの言うこと聞かないで入学せずとも、魔王の所に行く途中で仲間を手に入れればいいし、入学する必要はないからいいかな……


 僕が後ろ向きな考えをした次の瞬間。僕の体に掛けられていた何かしらの術が弱まった気配がした。


 これなら!


「【燃え尽きろ】」


 僕の詠唱と共に巨大な白炎の龍が生まれ、それが襲い掛かると一瞬にして目の前の耐魔人形は消え去った。試験官の男の人は目を丸くする。


「ご……合格です……ど……どんな方に師事なされたのか……さぞかし高名な方なのでしょうね……」

「えへ。うん! 素晴らしい方なんだよ!」


 【魔神大帝】様のことを語ろうとしたんだけど、試験管の人も忙しいらしく、3時間もしない内に時間切れとなったようでここまでとなった。

 それで、今日はここまでらしく明日から学校が始まるらしい。その前に先生の所へ行くそうだ。


 そこで話されたのは何か色んな貴族の人がいるから神姫といえども言葉遣いなどに気を付けてねってこと。

 後は何か明日は平民のニー……何とかかんとかを案内につけるけど、それは僕を軽んじているわけじゃなくて、いきなりの編入という事で貴族の人が準備できなかったという事。


 後は……今日から寮生活らしい。決まりと部屋を決めてもらった。因みに、僕たっての希望でどこかに14が入るようにお願いして、414号に行くことになった。


 満足だ。【魔神大帝】様のことを褒められたし、部屋の番号もいい感じになったから気分よくその日を終えることが出来る!





 ……この後僕は女湯に入ることを忘れていて最後に何か変な感じになった……




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