魔法少女、旅に出る
そして、パーティが終わった日の男子組は和やかだった雰囲気を一転させて別の場所で睨み合いを発生させていた。
(チッ……どういうことだマキ……! なんか色々勘違いさせてんじゃねぇか!)
(マキさんも可哀想に……こんなチャラい先輩に押されて……俺が、守る!)
(はぁ……我が主も罪な方だ。中々に厄介そうなメンバーを……)
主な睨み合いの発生源としては才覚ある平民魔術師ニースフェリア。同じく天才火炎魔術師で貴族のクリスだ。そしてそれらをやれやれと言った目でマキの使い魔となったジルバが見ている。その光景を更に俯瞰してみているのがこの国の王子であるマリウスだ。
(……マキさんも大変そうですね。今度、労うべきか……いや、怒るべきか……)
パーティの間は単なるマキの戦闘のパートナーとして、もしくは学内の仕事のパートナーとしてという間柄と思ってみていた相手が思っていたよりも深い関係になろうとしているのに気付いたのがパーティ解散後。きっかけはクリスのマキを自身の女のように扱っていたことから始まった。
それに反発したのがマキをあらゆることから守ると決めたニースフェリア。そしてその仲裁役として一番信頼されていると自負しているジルバが付き、全員同じ穴の狢だろうに。と思いつつ曲がり何も全員が高位の魔術師であるため、大事にならないようにマリウスがついて来ていた。
(聞くに堪えない惚気ばかり……)
そして、現在は自分の方がマキと思い出があり、これからも適切なパートナーとして付き合っていくという惚気以外の何物でもない発言を聞かされている状態にあった。両者ともになんだか病んでる人に聞こえるような内容で、孤独を癒してくれただの包み込んでくれただの彼らが美形でなければドン引かれるような話だ。
仮にここにマキがいれば自分はカウンセラーじゃないんだからそんなことしてないとでも言いそうな内容。しかし、この場にマキはいない。それどころか止める立場にあったジルバも自身とのつながりの方が大きいに決まっていると暗に伝えるために窘める態で隙あらば自分語りという形で参加しており、収拾がつかない状態だ。
「じゃあ訊きますけどねぇ、貴族である先輩はマキのこと本当に全てから守れるって言うんですか?」
「はん! 守れる、守れないじゃねぇ。守るんだよ。で、お前にもそっくりそのままお返ししてやるよ。平民であるお前は何の後ろ盾もないのに聖堂院や神巫女を利用したい国のお偉方からマキを守れるってのか?」
「同じ答えを返しますよ。」
(その、この国のお偉方である王子がここに居るんですがね……)
さり気なく十年来の親友にマキより優先度が低いと言われたマリウスは苦笑する。しかし、怒るという感情は湧かなかった。寧ろ、納得する感情の方が大きくあったから何とも言えない笑みを浮かべたのだ。
「上等だ。じゃあ、この旅の間も守って見せろよ? まぁ失敗しても俺がいるからマキには傷一つつけさせねぇけどな。」
「ふっ……守ることにおいて土属性以上に向いている属性はないと思うんですけどね……まぁ見ていてください。そのままフェードアウトすることになるでしょうから。」
「全く……手を抜いて困るのは我が主です。もう少し考えて行動していただきたいものですが……」
マリウスが自分の心の根底にある何かに気を取られ、その実態を探っていた間に何故か目の前の馬鹿トリオの話はまとまってしまっていたようだ。それに気付いたことでこの場をまとめることにしたマリウスは自身の心の奥底にあった何かを忘れ、結果として気付かなかったことにしてしまう。
「……きちんと民草、そして国のために協力できるように話し合いは出来ましたか?」
「あぁ、この国のすべての女のためにな。」
「へぇ……マキに言っておきますからね先輩。」
「あぁん?」
今更照れ隠しか何かは分からないが変な発言をしたクリスに噛みつくニースフェリア。そんな早速仲間割れしそうな雰囲気にジルバが割って入る。
「つまり、我が主のために一致団結することに決まったということです。」
「……まぁ何でもいいです。明日からの魔王討伐に向けて一致団結するということになったんですよね?」
この言葉には是という答えが返って来た。今回はそれでいいとしてマリウスはこの場を締めて解散を促す。その様子を見てジルバはくつくつと笑った。
「本当、厄介なメンバーですね……見栄張りの孤独な子どもと、儚く誰も信用できない平民のナイト。そして、傷付くのを恐れて誰も近付かせない王子。……我が主は本当に大変だ。」
その中にはお前も含まれているだろう。そう言える者はここにはおらず。発言主は銀の毛並みを月明りに光らせたかと思うと闇の中に消えて行った。
そして、とうとう旅立ちの日がやって来た。先頭にいるマキの左隣に彼女の妹であるハイジ、そしてマキとハイジの間の後ろにニースフェリア、マキの右後ろにクリス、ニースフェリアとクリスの間に猫状態のジルバがいてその後ろにマリウスとマーガレットがいる。総勢、7名の大所帯で魔王討伐の旅に乗り出すことになったのだった。
(……ん~戦力的には申し分ないんだけど……何か旅してる間に揉めそうなパーティだよね……面倒だからその辺の管理はせっかくついてきたんだし【破】に任せるけど……)
明らかに狙われている当人の感覚はその程度。立ち位置を少し考えればわかるものだろうが、マキとしてはトップに彼女と彼女の妹がいるからこうなった程度の感覚で、思考は過去の自身が軍勢を統率してきた時のまま変わっておらず、後ろは何か揉めてるな程度しか感じていない。そんなマキを見てハイジも溜息をついた。
「ハイジ、何回も言うけど手柄横取りしたら怒るからね?」
「はいはい……」
ハイジの溜息を自身の功績にもならないのにパーティに参加させられているからだと判断しているマキに呆れた返事を返すハイジ。そっと後ろに意識を向けるとクリスとニースフェリアがどちらがマキの役に立つかで火花を散らし、猫がそうやって揉めることがマキの迷惑になっている。仲裁に入る自分が一番だと主張して火花に火種を投げ込みさらに過熱する。
更にその後ろではマーガレットがマリウスに猛アピールをするもマリウスはマキとゆかいな仲間たちに視線を向けたままで流されており、マーガレットが既に攻略が……と呟いていた。
(なっかなかにカオスな……父様の家系には厄介なハーレムを作りましょうとかいう何かが存在してるのかしら?)
自分のことは棚に上げてそう思うハイジ。国費がどうのこうのでパレードはしなかったが、この醜態を見る限りでは大正解だ。出発からこのような状況のこの旅はどう考えても一筋縄ではいかないようだ。
「それじゃ、出発!」
そんな旅を前に、マキは何ら臆することなくそう高らかに宣言して魔王討伐に乗り出した。
ごめんなさい……一部で打ち切りです……




