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魔法少女、怒られる

「あなたはもう少し周りの目という物を気にした方が良いと思うのですが、どう考えてられるのでしょうかね?」

「自分らしく生きたいと思っているのでその辺結構どうでもいいと思います。仮にお師匠様がダメと言われたらダメですけどね。」


 現在、僕は何故か生徒会室に呼ばれて生徒会長こと道案内のマリウス先輩にお説教されております。心当たりは全くなかったから何事かと思ってひとまず来てみたのですがどうやらこの前の猫人間君を追いかけ回していた時のことがよくなかったらしい。長いソファの真ん中に座らされて怒られているのです。


 今現在、彼は眼精疲労なのか眼鏡の隙間から指を入れて目の辺りを揉み、眼鏡の位置を整えた。


 ところで。今全然関係ないけど魔導大世の癖になんで視力矯正如きの魔術を使わずに眼鏡なんかつけてるのだろうか。邪魔だと思うんだけど……いや、急に頭の中に【魔神大帝】様が眼鏡を付けた所が浮かんできたぞ……成程、いいね。ファッションか。


 【魔神大帝】様には黒縁の眼鏡が似合うと思います。いや、まぁ何でも似合うのですが、特にね……


「……聞いてるんですか?」

「一応聞いてますよ。」


 こんなどうでもいい話ではなくて極めて重要なことを考えていたのだが、ある程度結論が出てきたので詳しい所は後で考えて今は大人しく怒られておくことにする。


「大体あなたはみだりに肌を晒し過ぎです。淑女として……」

「これはあなた方の神の性癖の所為でこんなことになってるんですけど。僕は師匠とお揃いのローブの方が断っ然、絶対的にこの世の不変の真理として告げられるくらいに好きです。」

「…………それはその、何と言うか……」


 気まずげな空気になったぞ。これでお説教から逃れられるかなぁ?


「ま、まぁですが。スカートなど気を付ける点は他にもあるではないですか。」

「スパッツ履いてるのでセーフです。」

「……いや、ダメです。」


 頭痛でもするのか額に手を当てるマリウス先輩。無駄に格好いいけど何か腹立つな。いきなり殴ったらどんな顔するんだろ。


 僕が不埒なことを考えていると生徒会室の扉が開いて廊下からチャラ男が入って来た。


「お? 何だマキじゃん。」

「はいどうも。」


 女の子を連れて入って来た赤い髪のチャラ男…………何だっけ? 名前忘れたチャラ男はマリウス先輩に睨まれて肩を竦ませ、女子に歯が浮くような別れ台詞とキスを落として一時離脱させた。


「クリス。お前はどうして毎回毎回……」

「仕方ねーだろ、マキがここにいるなんて知らなかったんだからよぉ。」


 あ、思い出した。チャラ男さんはクリスだ。どうでもいいメモリーにきちんと保存しておかないと。いやー割と嫌いなタイプだから忘れてた。やっぱり覚える必要ないかな?


「……ところでクリス、マキさんと知り合いなんですか?」

「あぁ、お前が言ってたもんで興味があったからちょっとな。なぁ?」

「まぁ、はい。」


 どうでもいいけど終わったなら帰っていいかな? そんなことを考えているとマリウス先輩はクリス先輩を睨んで僕の方を見た。


「君は本当に警戒心というものがないんじゃないですか? 人に慣れた野良猫でももう少し警戒心を持ってると思いますよ?」

「失敬ですね。ちゃんと殺気や害意には敏感ですよ!」

「そう言う問題じゃありません……」

「アッハッハッハ! いやーマキは面白いなーおい……だが、ちょっと警戒感持ってなさすぎってのは俺も感じた所だな。好意の欠片も持ってない相手に呼び出されてのこのこついて来るくらいだし。」


 クリス先輩の一言にマリウス先輩がどういうことか事情を聞いて口論を始めた。二人で話するなら僕ここに必要ないよね? 帰っていいかなぁ? 最低限の調査は終わったけどまだやることはたくさんあるんだよね……


 すべきことに思考を飛ばしているとマリウス先輩がこちらを見て呆れ顔になっていた。


「マキさん、あなたの問題なんですから何でそんなに他人事にしてられるんですか?」

「へ? だって他人事ですし。」

「……いや~……お前さ、急に。」


 クリス先輩は急に言葉を切るとソファに座っている僕の方に近付いていきなりソファに押し倒したかと思うと至近距離で囁くように訊いてきた。


「こんなことされても、きょとんとしてるくらいだしな。」

「クリス?」

「わぁってるよ! お前の前でおっぱじめる訳ねぇだろ!」

「マキさんそいつ蹴っ飛ばしていいですよ。王家の名において許可します。」

「あ、言われなくてもそうしてますよ?」


 僕の言葉を合図としたわけではないだろうけど急に悶絶して股間を抑え、黙り込むクリス。鈍いなぁ……触れられた時点で蹴り入れてたんだけど……動きが不自然だったし何らかの魔術が掛かってたんだろうね。でも、それが物理ダメージで強制切断されるまでダメージに気付かないなんてダメダメだねぇ。


「お、ぉ……ぉ……」

「…………あの、マキさん? こいつの自業自得ですが少々やり過ぎでは……?」

「でも、魔術使えばすぐに治りますよね?」

「……まぁ、はい。」


 多分、片方潰れてるから早めにやった方が良いよ。そう思っているとマリウス先輩が無詠唱でクリスの体を治癒し始めた。純度、魔力、ともに申し分なしの素早い処置だ。


「っくぅ、っはぁ……あーマジ痛かった……言葉にならんよ……マキにはないからわかんねぇだろうなこの辛さ……」

「まぁ自業自得ですけどね。」

「いや俺まだ何もやってねぇだろうが。ある程度蹴られるのは許容するがこれは酷くね?」

「……過剰防衛とも言えますが、相手もそんなことをするくらいに恐怖を持ったということです。君から謝るのが筋でしょう。」


 おぉ、良い人だ。


 謝られた僕はそういうことでと退出することにする。しかし、最初の一件が終わっていないと言うことでその後も続けてお説教を、しかも手加減についての話まで混ぜられて長々と続けられることになった。




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