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三話


「長月霖っていいます!これからよろしくね~!」


そういって蒼天くんに握手を求めると眉を寄せて嫌な顔された。

ニコニコとしながら握られることがない右手を軽く振ってみる。

すると横から山田が出てきて私をポカリっと軽く殴って蒼天くんと引き離す。


「蒼天それ正解、コイツ人畜無害な顔で握手しつつケツ触ってくるから」


「ケツじゃない!腰だもん!!それに私流のAISATSUだもん!」


「挨拶なもんかこの痴女め!!」


「ひどい…私の生きがいをとるなんて…!これが人間のやることかよぉぉぉぉぉ」


…横目で蒼天くんが無言ドン引きしているの見てやりすぎたなと反省しました。

これからセクハラは控えます。




そんな珍事はさておき、今日も平和に部活が楽しい!

ドリンク作ったりトンボかけたり練習の手伝いなんかをこなしていく。

なにげに桜ちゃんとゴローちゃんばっかりと打ち合わせして喋る量が多い。

選手はもくもくと監督の練習メニューをしているからだ。

特にクロクロと蒼天くんはバッテリーになったので、今日は2人べったりと組んで練習している。

お粗末な話だがうちの部では蒼天くんが来るまで正式なピッチャーがいなかった。

山田がピッチャーをやっていたが本人はほかポジションを希望していた。

個人的には合ってると思ってたんだけどなぁ。なんだかんだいって楽しそうにしていたし。


「てめぇ、ふざけんじゃねえ!!」


そんなこんなで目を離していたうちにクロクロが蒼天くんの胸ぐらを掴んで怒鳴ってました。

慌てて日向くんが止めに入っているがクロクロは乱暴に突き放しひと睨みした。


「黒崎!」


クロクロは山田が声をかけても無視して荷物を乱暴に手に取り学校を出る。

みんな唖然としながら見送ってしまってもう彼の姿が見えなくなった。

ゴローちゃんも気を取り直して


「てめぇら、練習サボんなよ~」


手をパンパンと叩いてみんなを促す。

そんな監督の反応にみんな戸惑いを見せていた。

確かにこんな状態で普通に練習しろっていう方がおかしいとは思うだろう。


「あいつも私たちも頭冷やしてから話し合ったほうがいい。

それにここでグズグズしてても時間の無駄だ。練習するならちゃんとしな」


「俺、ちょっと黒崎のこと見てきます」


日向くんはキリッ(`・ω・´)とした顔で荷物を乱暴に持つと走っていった。

頼りない少年だと思ってたけどどんどん主将らしくなってくんだなぁ。





「頑張ってるね。帰ってからずっといたの?」


部活が終わってからちょっと遠回りして帰る。

鄙びたバッティングセンターにやはり目的のクロクロはいた。

バッティングセンターといっても彼は許可を得てキャッチングをしている。


「んだよ」


不機嫌そうな彼にスポーツドリンクを差し出せば、時間を置いてニヤと凶悪面で笑った。

それが可愛いと思える辺り、私は末期なのかもしれない。黒崎症候群とかそんな感じか。

漫画みているときはそこまで好きではなかったんだけど、どうしてかな、やっぱり友達だからか。


「サンキュ、気が利くじゃねーか」


「一応マネージャーだからね、ホイ」


キャップをはずしてあげる。すごい汗だったのでタオルを準備してスタンバイ。飲み終わると手渡しする。黒崎の動きが止まった。


「お、お前のタオルなんてつかえねーよ!」


「え、使ってないよ!綺麗だよ!いい匂いだよ!・・・多分」


「多分ってなんだよ」


黒崎がわはっと笑った。うけたようで嬉しい。


「だって黒崎のタオル汗びっしょりじゃん。

風邪ひかれても困るし、予備のだから適当に洗濯して返してくれればいいよ」


さすがに洗濯してはもらいたい。

男のくっせー汗まみれのタオルとか返されてもどうしていいのか。

まぁクロクロって強面だけど心が繊細なやつだからそんな失礼なことしないと思うけど。


「あ~・・・なんかどうでも良くなってくるな

・・・いやどうでも良くはねぇんだけど」


「どっちだよ」


ちょっと真顔になって、クロクロは視線を自分の足に落とした。


「あいつ俺に全力投球しねぇって」


「ほぅ」


「俺はあいつの球を取れる力量がない、か」


「ほうほう」


それから適当に相槌を打ちつつ手持ちの飲み物を飲んだ。


「つまり蒼天くんの全力投球をとりたいってそんなウブなことだってばよ?

でも取りたくても取れなくて蒼天くんにキレてここで隠れて練習して追ってきた日向くんに八つ当たりしてってそういうあれ?

はぁ~!クロクロも人並みにに反抗期きてたんだねぇ・・・ずっとカルシウム不足かと…」


「・・・くそ、てめぇ」


顔を赤くしながらクロクロは肯定する。

あ、分かりづらいですがこれが彼の『うん』です。


「ん、あ~、、これ私がいっていいのか・・・?いっか。

ん~クロクロはさ、もっと自分のいいところを知るべきなんじゃないかな」


「んだよ、それ」


「自分はこれが得意、不得意って解析してみれば?

クロクロって人のことは結構詳しいのに自分のことになるとだめだめなんだね~」


そういうと真顔で考え込んだので、そっと席を立つ。

本当は明日の練習はこいよって伝えたかっただけなんだけどまさか相談持ちかけられるとは。

クロクロ自身が考えてたどり着かなきゃいけないことだったけど無碍にはできめぇ。


わたし的にもクロクロのいいとこって配球のセンスだと思うんだよね。

前回の大会山田のヘロヘロ球でも一勝できたのはそのおかげだと思う。

顔に似合わず分析は冷静にできるし頭がいい。

だけれど自分では気づいてないんだよね。もったいない。


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