聴覚障害者の日常 警告音編
アタシは、一応、補聴器はしている。
でも、ある程度の音にしか反応しない。
補聴器をしても高い音はまったく聞こえない。例えば、リコーダーの高い音、笛の音、キーンとする音など、それは健常者の超音波が聞こえないのと同じようになる。
感知する音の幅が極端に狭いのだ。
狭いくせに、不快な音というのはある。キンキンな声、救急車の音がそうだ。
救急車がそばを通る時などは、目眩をおこしかけることもある。
警報、警告音、あるいはお知らせ音というのが、生活の中であふれている、ということを子供たちが大きくなるまで知らなかった。
冷蔵庫のドアが開けっぱなしの時になる音、
炊飯器の炊き上がった時の音、
オーブンの余熱終了や焼き上がりの音、
トースターの焼き上がりの音、
ガスコンロの立ち消えの音……
思い付いただけをかいてみたが、全部、子供たちに
「なったよ!」
「なってるよ!」
と教えられたものばかり。
どれも、補聴器をしても聞こえない音だ。
もともと、アタシはうっかりして忘れやすい。何かをしながらだと、かなりの確率で忘れる。
お風呂のお湯をためながら他の仕事をしたり、調理をするときもお湯をわかしながら他のことをしたりすると、お湯をあふれかえさせたり、鍋を焦がしたりする。
今のガスコンロは、火をかけたままつけっぱなしにすると自動消火して警告音がなるらしい。
そうすると、子供が飛んできて、
「お母さん!火をつけっぱなしでしょ!!」
と、怒りながら注意する。
なんだか立場が弱くなっている気がするのは気のせいだろうか?




