【番外編】魔法が使えない三日間 <一日目>魔法が使えないなら、実力で勝負すればいいのでは?
時間軸:一章の12話裏
✴️“滅びの断末魔”を使用した代償として魔法が使えなくなってしまったリズム。レベル上げができない三日間、リズムは一体何をして過ごしたのでしょう?
一日目です。
「ひ、暇ぁ〜〜〜……!」
誰もいない家でそう言って、私は何度目かわからないため息をついた。
だって、めちゃくちゃ暇なんだもん!! とてつもなく暇!! フィール星には、地球と違ってスマホとかテレビとかがないから、やることがないのだ。
どうして暇かというと……。
“滅びの断末魔”を使った代償として、魔法が使えないから!
私は昨日、レベル三十の闇持ち巨大兎と戦った。これが、結構厄介な相手で苦戦したのだ。ライムも怪我しちゃって、すごいピンチだった。
そこで、どんな敵でも倒せる一撃必殺の魔法、“滅びの断末魔”を使ったんだ。でもこの技、強力なだけあって代償がいるんだよね。代償は、自分と相手のレベルの差によって変わるんだけど、今回は「三日間魔法が使用不可能」というもの。最悪の場合、自分の命が代償になることもあるのだとか。
そんなわけで、私は今日から三日間、魔法が使えません! ……はあぁぁ。
本当に暇なんだよ、これが。
魔法が使えないってことは、レベル上げができないってこと。魔法が使えないってことは、魔法の練習もできないということ。この二つができないってことは、やることがなくなるってこと。
暇ぁぁぁ!
ライムは今、レベルを上げるために外出中。話し相手もいない。ライムが帰ってきたのは、昼食のときだけ。「レベル二になりました!」って、嬉しそうな表情で報告してくれた。
午前中は、家の探検とか、庭の花の観察とかをして過ごしたんだけど。でも、それももう終わっちゃって。そして、午後二時現在。とうとうやることがなくなった。
家もすべて見たし、庭の花の種類とかもカミキソを使って全部把握した。
これが、あと二日と半日続くとか……。地獄かよ。うん、地獄だな。暇って、思ったより地獄だわ。
「レベル上げしたい〜〜!」
私も、早く強くなっていろんな魔物の闇を取り除けるようにならないといけないのに。そして、何よりレベル上げって、楽しいんだよね。
「どうにかしてレベル上げをするぞ!」
家でのんびりしているのも飽きたし。レベル上げたいし。だから、私は魔法が使えなくてもレベルを上げることを決意した。これから二日と半日、魔法なしでレベル上げしてやる!
「でも、どうやって……? はっ、そうだ!」
魔法が使えないなら、自分の実力で勝負すればいいんだ! パンチとかキックとかすれば倒せるかもしれない!
「よし、出発!」
私は、勢いよく家を飛び出した。さあ、レベル上げの始まりだ〜!
――♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪――
家を出てから歩くこと二分。私は、スライムに会った。
黄緑色の、可愛いスライムだ。レベルは二。
これならいけるのでは!? 早速突撃だぁ〜〜!!
「パ〜ンチ!」
私は、大きく拳を振りかぶってスライムに向かっていく。そして、スライムに手が当たった。
これで倒せる……! と思ったのもつかの間。私の放った拳は、スライムのぷにぷにの体に当たってバウンドしただけだった。スライムはダメージを受けた様子もない。
……あ、あれ? 攻撃、効いてない……!?
なんだと!? そこまで考えていなかった! そっか、スライムの体、ぷにぷにじゃん! 当たったところで、バウンドするだけに決まってるじゃん!
不味い、不味い。暇だったせいか、楽しそうなことを見つけた瞬間、後先考えずに行動してしまった。
もしかして、スライム、怒ってる?
「ぷ〜に〜!! ぷに〜〜!!」
私がスライムの方を向くと、スライムは低い声でそう言って私に突っ込んできた。
ひえぇぇ!! ですよね!? そりゃ、突然見知らぬ人間に殴られたら怒りますよね!? すみませんでしたぁ〜!!
私は、スライムに追いかけられながら、ダッシュで家に向かっていく。スライムはバウンドして移動するため、移動の速度は遅い。私は無事に家に辿り着くことができた。危なかったぁ……! 家に帰ってこれてよかったぁ……!
「今のは相手が悪いんだ! スライム以外の生物なら勝てるもん!」
絶対に魔法なしでレベル上げしてみせる! よ〜しっ! 気を取り直してもう一度チャレンジ!
私は、そ〜っと家を出てまた歩き出す。いい感じの生物は……。探しながら歩くこと約三分。私は、池の水を飲んでいる怖そうな猪を見つけた。
「うわっ!?」
思わず大きな声を出してしまう。声を出した後に口を塞いだけど、時すでに遅し。猪、こっちに気付いてないよね……!?
私は恐る恐る猪の方を見てみる。猪は、変わらず池の水を飲んでいる。
ふぅ……。よかった……。猪は無理だ。怖いし、強いし、魔法なしで勝てる相手ではないと思う。このままこの場を離れるとしよう。
そう決めた私は、猪からゆっくり離れていく。十歩ほど進んだ時、隣の草から何かが勢いよく飛び出してきた。
「うわぁあ!?」
「ぷへぇ!?」
私は、思わずさっきよりも大きい悲鳴をあげてしまった。
……って、あれ? 今の奇声、なんか聞いたことがあるような?
「え、リズムさん!? どうしてここに!?」
「やっぱりライムだ! よかった……! どうしてって、レベル上げするために決まってるよ」
「レベル上げ? リズムさん、魔法が使えないのでは――」
「うわ!?!?」
ライムが不思議そうな表情でそのことを聞こうとしたとき、私はさっきの怖そうな猪が突進してきているのを見た。
「ライム、逃げるよ! 猪が来る〜!」
少し混乱している私の横で、ライムは魔法を放った。
「“水鉄砲“!」
ライムの手から放たれた激しい水流が、一瞬で猪を貫く。いつも通り、グロい倒れ方で猪は消えていった。
「――え?」
私は、呆然とした。え、何あの攻撃。何あの速さ! 猪を貫くほどの……!? すごっ!! ライム、いつの間にそんなに強くなったの? あの怖そうな猪がこんなにあっさりやられるなんて……。
「大丈夫ですか?」
ライムが、固まってしまった私を心配してくれる。
うん、大丈夫。固まってしまったのはあなたのせいでもあるけどね。
「すごいよ、ライム! 今の、めちゃくちゃ格好良かった!!」
しばらくして、頭を整理し終わった私は、ライムに言った。たった一日でこんなに強くなれるものなの!? ライム、すごすぎる!!
「っ、あ、ありがとうございます」
ライムは、嬉しそうに笑った。ほんのり顔が赤いのは、照れているからだろう。そんなところも、可愛いっ!
私が心の中で悶えていると、ライムははっとしたように表情を引き締め、微笑んで言った。
「とりあえず、家に戻りましょう。リズムさんに聞きたいことがあるので」
なんか、笑顔が怖くないですか?
――♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪☆♪――
ライムによって、家に強制送還された私は、今、問い詰められております。やっぱり、こうなりますよね〜。
全てを説明した私は、ライムに怒られた。「なんでそんな無茶をするんですか!?」と言われている。まあ、気持ちはわかる。私も、今になって考えてみたら、とんでもない挑戦をしていたんだなってわかったから。
あの時、私は暇すぎて冷静さを欠いていたようだ。やりすぎたという自覚はある。
でも、でも〜!! これからどうすればいいの!? こんなのがあと二日も続いたら私、正気でいられないかもしれない!
楽しいこと不足で死んじゃうよ……。
「魔法が使えない間は、家から出ないでくださいね! 外はとても危ないんですよ!」
「ええっ!? 家から出ちゃダメなの!? ライム、私を殺す気!?」
「どうしてそうなるんですか!? 外に出たら、その辺にいる生物や魔物に殺されますよ!?」
「うっ……! 確かにそうだけど……」
不味い、ライムの言っていることが正論すぎて反論できない。このままだと、明日から私は暇地獄ではないか!? 嫌だ〜!!
私は、明日からの暇地獄を回避するべく、ライムに話し合いという名の戦いを挑んだが、結局負けた。ライムが正論ばかり言うせいで!! そんなに正論言わないでよ!
私は、外出禁止になってしまったのだった。
今夜、ルカ様にこのことを話したら、「じゃあ、明日、良いものを用意するね。楽しみにしてて」と微笑んでくれた。
良いものって何!? 明日、楽しみっ!
リズムは「楽しいが不足すると冷静ではいられなくなる」という体質持ちです。
お読みいただきありがとうございました!\(^o^)/
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次は魔法が使えない三日間のうち、二日目のお話です。次回更新はいつになるかわかりませんが、いつかは必ず更新しますので、そこはご安心ください! ……本当ですよ? 絶対に更新します!!(`・ω・´)ゞ




