ちょっと気になる男の子
今回はヒロイン視点です。
〈神崎燈side〉
「ねえ燈、悟君とはどういう繋がりで知り合ったの?」
喫茶店の営業時間が終わり皿洗いやら明日の仕込み等をママとしていたら陽気な声で質問される。こういう時のママは少しばかり困ってしまう。
「別にゲームセンターの近くの外で一人でスマホをいじっていたらチャラそうな男二人に絡まれていた所を助けられただけだよ」
私がそう答えるとママはニッコリと笑う。
「そう。それで悟君のことを意識しちゃったのか」
「別にそれだけで意識なんかしてないから……」
「あら他に何かがあったの?」
ママの問い掛けに言い淀む。確かにただ助けてくれただけなら私も影野の事を気になったりはしなかったと思う。
「影野は他の男子と違って私に助けた事を口実にして言い寄ってきたり、なんて言うか下心とか一切感じなかったから」
実際昨日の事が無かったら私は影野悟の事を知ることもなかった。だから私は警戒した。これを機に隙あらば仲良くしてこようとしてくるかと思って。
でも実際は違った。影野はただ単純に私が困っているから助けてくれんだ。
「あ~確かに悟君と話してて思ったけど下心とか一切感じなかったわね。今時あんな子居ないなって感じたわ。礼儀正しくてそこも好感持てたし」
そう。影野は礼儀正しくて素敵な人だと思う。そして今日一日影野を見ていて分かった事が有る。影野は多分面倒くさがりな人間なんだなって今日つくづくそう思った。
私が教室で昨日のお礼を述べたら、その事を出汁に多数の男子に囲まれて質問攻めに遭っていた。それが終わった瞬間影野は疲れ切った顔をしていた。
あれは見ていて悪い事をしてしまったなと罪悪感が芽生えた。それに放課後に喫茶店に声を掛けたら影野は美人局か罰ゲームじゃないかと言って来た。あれには呆れ半分若干イラッともした。
多分そう言う発言をするのは影野が必要以上に自分に自信が無いからなんだろうな。それなのに私を庇うくらいの度胸は有る。きっと多分影野は基本面倒くさがりだけど、目の前で困ってる人は見捨てられない性格なんだろうな。
「燈、うかうかしてると……悟君誰かにとられちゃうわよ」
私はその言葉に数秒固まる。そしてすぐに苦笑して首を左右に振る。
「そんな事は絶対にないよ。だって影野は非モテ陰キャだもん」
そう。彼はいつも両目が隠れるくらいに前髪を伸ばしていて誰かに話し掛けられない限り基本無口。そんな影野が女子に言い寄られるなんて想像できない。
「あのね燈、人は見かけじゃなくて中身だって私は思うのよ。確かに燈は過去に問題があって今でも引き攣ってるのは分かる。そこは私の不注意のせいもあるから悪いと思ってるわ」
ママがこれ以上無いくらいに悲しそうな表情をする。確かに私は未だにあの出来事を引き攣ってる。そのせいで誰も信じられなくて人との距離を測りかねている。
「だからね、私今日悟君を連れて来てくれて安心したのよ」
「安心?」
「ようやく燈にも心の底から信用できるって思った人が出来たんだなって」
信用できる……か。どうなんだろう? 影野事は信用しても良いような気がする。と言うか気になる。今まで私に寄ってくる人は私の外見を見て内面を見ようとしない人ばかりだったから。影野が今まで居なかったタイプで新鮮って感じがする。
「それに燈、悟君が帰るとき寂しそうな表情をしていたものね」
「なっ」
ママの発言に絶句する。確かに影野が帰るとき少しだけ……ほんのちょっぴり寂しいとは思ったけど。
「でも私の見立てだと彼は難攻不落よ。礼儀正しくてしっかりしてるけど、どこか他人に対して一歩引いてる感じがしたから」
確かにママの言うとおりだと思う。影野は自分から人に話し掛けたりしそうにタイプに見えない。かと言って友達が全く居ないわけじゃない。休み時間に彼と親しげに話し合っている男子が居た。放課後も話していると頃を見ている。見るからに長年の付き合いなんだろうなって察しが着いた。
とはいえ影野は若干迷惑そうにしていたけと。まあでもそれは納得できる。たたでさえ目立ちたくない影野だからこそ、あんな爽やか系イケメンと連んでいたら悪目立ちするだけなんだから。
「燈、この際だから言うけど悟君のこさ事を気に入ってるんだったら意識して貰えるようにグイグイ行った方が良いわよ」
ママの言葉を聞いて私の顔が熱くなる。きっと今の私の顔は真っ赤に染まっているに違いない。
「そんな……そもそも私と影野は友達ですらないのに」
「友達でもないのに喫茶店に誘ったの?」
ママのその言葉に反論出来ず私は俯いてしまう。そんな私を見てママはクスッと笑う。
「まあ燈はもう少し自分の気持ちに向き合って素直になることね」
「自分の気持ちに向き合って素直に?」
言ってる意味が分からずオウム返しに問い掛ける。
「要は燈が影野君ともっと仲良くなりたいかって事」
ママの言葉を聞いて私は考える。最初は影野が他の男子達と一緒で言い寄ってくる存在だと思ってた。でも影野は言い寄ってくるどころかなんも見返りを求めずにそれどころか私の事を考えて不干渉を決め込んでいた。
今までそんな男の子が居なかったから正直な話もっと彼の事をもっと知りたい。
「でも学校じゃ話し掛けちゃ駄目って言われてるし」
「そんなの関係ないわよっ。気になる子が居るならどんどんアタックしなさい」
「……引かれたり、嫌われたりしないかな?」
ママはその言葉を受けて笑い声を上げる。
「あのね燈、男の子は単純でね可愛い子や美人から話し掛けられたら嫌な気はしないものよ」
「……そういうものなの?」
「ええ。だから燈なりに勇気を出して頑張りなさい」
ママのその言葉と同時に皿洗い並びに明日の料理の仕込みが終わる。
「さてと、これで粗方終わったわね。手伝って有り難うね。もし悟君との事で困った事が有ったら相談しなさい。いつでも相談に乗るから」
「ありがとう。今日はこのままお風呂に入って寝るね」
「ええお休み」
「おやすみなさい」
私はそう言って風呂場へ向かう。明日からはもっと影野に対して積極的に関わる事を決意しながら。




