私の気になる人が危険に巻き込まれてそう
今回はヒロイン視点です。
〈神崎燈side〉
教室にとある一人の男子が来た。その男は見覚えだった。いつも下心が見え見えの男子。確か三年生の人だったかしら。見た目がチャラくて馴れ馴れしい人。彼が絡んでくる度に疲れて嫌な思いをしたわ。
そんな彼が来て影野を呼び出した。私は嫌な予感がした。彼は暴力を平然と振るう人間だ。私も何度かその場面を見ている。頼もしい一面を私に見せ付けたかったんだろうけど、私は暴力を振るう人間は嫌いだ。
そんな彼が影野を呼び出した。これは影野に対して暴力を振るうんじゃと不安になってしまう。
私は二人を追い掛けた。場所は校舎裏で私は二人から見えないように陰に隠れながら様子を見る。片手にスマホを持って動画モードにして二人を映しながら。
「あの誤解が無いように言いますけど。俺は神崎さんと親しくしてるつもりもないし、彼女も俺という人種を物珍しくて寄ってるだけです。それに多分……神崎さんは貴方みたいなタイプは嫌いだと思いますよ」
影野がキッパリと私との関係を否定する。影野が私の嫌いなタイプをしっかり理解してくれてる事に嬉しくなった。でもそれと同時に悲しくもなった。
影野は私の事を思ってキッパリと否定したんだろうけど、まさか友達だとすら思われてないなんて。でも影野は控え目な性格だから納得も出来る。でもやっぱり悲しい……。
「大体いきなり教室に押し掛けてきた上、自分の名前も名乗りもしないし、オラオラしてるのって人としてどうかと思います」
影野は淀みなく思った事を言う。確かに彼の言う通りだなって思う。影野って当たり前のことを恥ずかしげも無く自然に言うんだよなあ。だからこそ私は影野の事を気に入っちゃったんだけど。
「……うっ」
いきなりの出来事に頭が真っ白になる。男が影野の顔を殴ったから。
「決めた。お前の事ボコるわ」
男がニヤニヤしながらそう告げた。私はその言葉を聞いて心の中が怒りで満たされていく。許せない。私の大切な人を痛め付けた上で更に暴力を振るおうとしている状況に。
影野も影野だ。相手から手を出されたのだからやり返せば良いのに。私は我慢が出来なくなって二人の前に飛び出す。
「私の大切な人痛め付けるのを止めて下さい」
私がそう言うと男は驚愕で目を大きく見開きながら
「か、神崎っ」
と声を上げる。影野に至っては突然の私の出現に頭がついて行けてないのか困惑した表情を浮かべている。
「今のやり取り暴力を振るったところもしっかり動画に撮らせて頂きました」
私はそう言いながら動画の録画を止める。良かった。もし何か有ったときの為に録画をしていて。
男は焦って私に詰め寄る。
「ち、違うんだっ。これはお前のためを思って……」
と言い訳してくる。何がお前の為なのか理解できない。全部この男の独り善がりじゃない。
「何が私の為なのか分からないですし、暴力を振るった事も理解出来ません」
そう言うと男はバツの悪そうな顔をしながら
「それはコイツが俺の言う事を聞かないから」
と言う。私はその言葉を聞いて怒りが爆発した。
「影野が言ってる事は正しくて何も間違ってない。私が好きで影野を構ってるんです。それに暴力を平然と振るう人間は嫌い」
私がそう告げると男はショックを受けたようで呆然としていた。
「そもそも私、貴方の名前も知らないし興味ないです」
私はニッコリと笑って告げる。すると男は縋り付くような態度で
「でも……でもあれだろ。女は強い男が好きなもんだろう」
「たった今言ったことを忘れたのですか? 私は暴力を平然と振るう人間は嫌いだし、馴れ馴れしくしてくる人間は大っ嫌いです」
私は毅然とそう言う。男は顔を俯かせる。私は最後のダメ押しに
「今私が録画した動画は教師達に提出します。これでもう貴方の高校生活は終わりです」
私がそう告げると男は一目散に駆け出して逃げていった。ふう、これでもう変な虫は消えたかな。私は影野の元に歩み寄る。
「影野……大丈夫?」
私は心配して影野に声を掛ける。
「あ、ああ……こんなのなんてこと無いよ」
影野は無愛想に告げる。私は影野が撲られた頬に触れる。
「腫れてるじゃない。きちんと冷やさないと駄目よ」
「別にこれくらい平気だって」
「もう影野も男の子よね。でも強がってないで保健室に行こっ」
私はそう言って影野の手を取り強引に歩かせる。あ……影野って細身で頼りない感じだけど、男の子なだけ有ってゴツゴツしてるんだ。私は影野の手を握って驚く。なんかドキドキする。そう言えば私男の子の手を握ったの初めてなのよね。
「そう言えば、なんで神崎さんはあの場にいたの?」
私がドキドキしている事を知らない影野がそう聞いてくる。
「それはあの男が影野に暴力を振るうんじゃないかって思ったから」
そう、あの男は誰であろうと暴力を振るう。私の気に入ってる人が暴力を振るわれるんじゃないかって心配になって様子を見る為に付いてきたんだ。
「影野……なんであの男から殴ってきたのにやり返そうとしなかったの?」
ずっと疑問に思った事を私は尋ねる。
「ああいう人間は暴力で言う事を聞かそうとするタイプだからな。もしこっちがやり返そうとすれば逆上して更に激しく痛め付けてくる……そう判断してやり返さずに耐えることにしたまでだよ。それに俺は喧嘩が強い訳ではないしね」
苦笑交じりに影野が言う。影野はちゃんと人を見た上で耐えていたんだ。でもなんだろう。心の中がモヤモヤする。なんだかずっと、前からそうして生きてきたみたいに聞こえた。
保健室に着いた。中に入ると清潔感の溢れる白い壁や天井。奥にはベッドが二つ。入り口付近に横長のソファが置かれている。
「あらいらっしゃい。どうかしたの?」
とニコニコしながら奥に位置する椅子から立ち上がりこちらに歩み寄ってくる女性。彼女は志田夏美でこの保健室の担当をしている人だ。よく生徒達は親しみを込めて、なっちゃんと呼んでいる。
「実は影野……この子が殴られてしまって顔が腫れているので冷やす為にここに来ました」
私が説明すると志田先生は笑いながら頷く。
「男ね。格好いい」
なんて冗談を言いながら傍にあった冷蔵庫から氷嚢を取り出す。
「そこのソファに座って」
そう言われて影野は素直にソファに腰を下ろす。そして志田先生は顔の腫れてる部分に氷嚢を当てる。すると影野は痛いのか顔を歪める。
「じゃあ私これから職員室に行ってくるから」
さっき撮影したビデオを教師達に見せなきゃ。私は保健室の出入り口で立ち止まって振り返る。
「……影野」
名前を呼ばれて影野が私の方へ顔を向ける。
「私は影野の事……友達以上だと思ってるから」
私は恥ずかしくなりながら告げると出入り口の扉を開けて保健室から出て行く。
あーちょっと攻めすぎたかな。でも友達以上って言えばちょっとは意識してくれるよねっ。でも影野の事だから友達なんだってのほほんと思ってそう。でも流石に好きなんいえるほど勇気がないよ。それに自分から告白されるんじゃなくて出きれば影野から告白されたい。
私はそんな歯がゆくて,モヤモヤする気持ちを抱えたまま職員室に無かうので有ったのであった。




