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• 『社交界の華は、影に咲く毒。〜私を捨てた世界、すべてお返しいたします〜』  作者: YOLCA
第4章 至宝の覚醒-運命を塗り替えるまで

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真実の証明 ――捏造を追い越した奇跡の夜

測定石がドロドロの飴細工のようになった翌朝。

学園の演習場には、隣国から超特急で運び込まれた『代替の測定石』が据え付けられていました。

「……フェイ、準備はいいな」

ヴィンセントが、隈の浮いた顔で囁きます。

「はい、閣下。周辺の教師や生徒たちには『昨日の石は廃棄予定の旧型で、エレーナ様は解体訓練を行っただけだ』と根回し済みです。……あとはこの『内部が爆発寸前だった』という捏造報告書を陛下に受理していただければ、お嬢様の破壊は『正当な公務』になります」

彼らは必死でした。エレーナの「うっかり破壊」を「救世の破壊」という嘘に書き換えることで、彼女を不祥事から守ろうとしていたのです。



同じ頃、王宮のサンルームでは、エレーナを囲んでのお茶会が開かれていました。

そこには、片時も離れず影のように控える侍女カミラの姿もあります。

「エレーナ、本当に怪我がなくてよかった……!」

昨日の恐怖からようやく解放されたクロードが、感極まってエレーナの肩を抱き寄せようとしました。

パシッ!!

「いったぁっ!?」

電光石火の速さで、リサーナの扇がクロードの手の甲を叩き伏せました。

「クロード!!、わたくしがいつ『接触』を許可しましたの? エレーナが昨日、世界を……あ、失礼、石を壊したからといって、貴方が彼女のパーソナルスペースを侵害していい理由にはなりませんわ」

おばあ様は冷徹な眼差しで孫を射抜きます。

「エレーナは今、わたくしが捏造……いえ、『調整』した書類によって、危うい均衡の上に立っているのです。貴方の軽率な行動が彼女の評判を落とすこと、お分かりかしら?」

「……は、はい。申し訳ありません、おばあ様……」

クロードが項垂れる横で、エレーナは「まあ、クロード様ったら。わたくし、大丈夫ですわよ?」と、何も知らずに微笑んでいました。



そこへ、皇帝とヴィンセントが、震える足取りで乱入してきました。

「母上!! 大変です、捏造どころではありません!!」

皇帝が突きつけたのは、シオンによる最新の残骸解析データでした。

「陛下、落ち着きなさいな。嘘の書類ならヴィンセントが完璧に……」

「違うのです!! 私たちがエレーナを守るために捻り出した『石が爆発寸前だった』というあの嘘……あれ、本物だったのです!!」

「………………え?」

リサーナの扇が、手から滑り落ちました。

シオンの報告によれば、石の核には数百年前の設計ミスによる魔力壊死が溜まり、放置すれば今朝には帝都が消滅していたとのこと。

「……エレーナが、たまたま、測定しようとしてぶつけた魔力が、ピンポイントでその『爆弾』を焼き払っていました。……捏造する必要なんてなかった。本当におエレーナが壊さなければ、我々は今頃死んでいたのです!!」

「…………っ?!」

おばあ様は、顔を真っ赤にして絶句しました。

「わたくし……あの子の『純粋な測定』を、不名誉な事故として隠そうとして……あんなに策士ぶって……恥ずかしい嘘を塗り固めていたのに……!」

己の浅はかさを恥じ、おばあ様は扇で顔を隠して沈黙しました。



夕刻。

すべての騒動を「何も知らないまま」終えたエレーナは、宿舎へと帰る馬車の中にいました。

隣には、相変わらず無表情で、しかしどこか誇らしげに背筋を伸ばしたカミラが座っています。

「カミラ様、皆様なんだかお顔を真っ赤にして、変な雰囲気でしたわね。わたくし、やっぱり何か失敗してしまったのかしら……」

不安げに尋ねるエレーナに、カミラはわずかに口角を上げました。

「いいえ、お嬢様。皆様、お嬢様の『あまりに完璧な測定』に、感極まっておられただけですわ」

「……そうなのですか? お掃除の練習、もっと頑張らなくてはいけませんわね」

エレーナがコックリと眠りにつく中、カミラは窓の外の帝都を見つめました。

(たまたま……いえ。お嬢様のその『白さ』こそが、この国に溜まった澱(汚れ)を、本能的に弾き飛ばしたのでしょう)

馬車は静かに、夕闇に包まれた学園の宿舎へと滑り込んでいきました。

明日からは、捏造の必要すらなくなった「救世主エレーナ」としての伝説が、学園中に広まることになるとも知らずに。

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