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8 タイミング

 人が結婚を申し込むまで、どれほどの時間を要するのだろうか。

 出会いからプロポーズまでの最低期間は? 平均は? タイミングは? 誰か教えてくれ。もう限界だ。俺は、今すぐにでも結婚したい。


 麗奈と過去や未来について語りあう中で、結婚のワードはまだ出ていないが、毎週末、彼女の手料理を食べ、一緒に風呂に入り、ずっとそばにいてねと求められて幸せをかみしめてきた。

 この先もそばにいてほしいという願望は、麗奈からの結婚アピールともとれる。

 結婚の申し出を断られる不安は毛ほどもない。



 ノー残業デイの水曜日、本能に従ってバイクにまたがり、ジュエリーショップへ向かった。


「昔は給料3ヶ月分なんて言いましたが、今の相場はこのあたりですね。」


 ショーケースを見下ろし、女性店員が示したあたりの指輪を見ると、20万以内のものがいくつか並んでいた。

 予想していたよりも手ごろなものが多く、身構えていた心が多少ほぐれた。

 今は、プロポーズ後に二人で選ぶ人も多く、婚約指輪より結婚指輪にお金をかけたい女性もいるらしい。

 麗奈の好みもサイズもわからなかったが、店員に言われるがまま、相場価格を少々上回るダイヤの指輪を購入した。


 いざプロポーズ用の指輪を準備すると、現実味がぐっと増し、タイミングなんてどうでもよくなった。


 さて、次に大事なのは渡す日時と場所。

 スマホのカレンダーを開くと、翌週の火曜に星マークがついていた。


 そうだ。来週は麗奈の誕生日だ。


 誕生日か。


 誕生日と一緒にプロポーズするか。

 前髪をかきあげながら、うぅんと唸った時、ふと思い出した。


 以前、誕生日には俺の手作り料理が食べたいと言っていた。人様に食べさせる料理など作ったことがないため聞き流していたが、それを叶えるのはどうだろう。


 料理も喜ぶだろうが、指輪を渡したら――、麗奈はきっと子供のように抱きついてきて、キスをせがんでくる。

 とするとこの計画は、二人きりが望ましい。それはやはりマンションがベストだろう。


 だが、女性が憧れているであろう世間のプロポーズの在り方から鑑みて、自宅で済まされたと、不満に思うかもしれない。


 プロポーズ記念として、旅行の予定を立てていると付け足すか、その場の雰囲気から察してプロポーズの有無を決めてもいい。

 ともあれ、誕生日が近いのは好都合だ。火曜で平日だが、その日にプロポーズしようと決意した。



 女心がわからないなりに必死に想像し、麗奈の帰宅前に花束と食事を部屋に用意するというサプライズ計画を立てた。


 大雑把な男料理は作れるが、果たして一生の思い出になるような料理が作れるのか。あと数日で練習するしかない。


 ただ、一つ問題がある。

 ほとんどの週末を共に過ごしてきたが、麗奈の部屋の合鍵を持っていない。

 欲しいと思ってはいたが、逆に、自分の鍵を求められたら困ると思って、言い出せなかった。


 俺は掃除が苦手だ。

 留守の際に麗奈が突然やってきたら、強盗が入ったと警察に通報されかねない。人格を疑われるレベルだ。かといって、いつ来られてもいいように片付けておくのも難しい。

 彼女の家に入り浸っているこちらが言うのもおかしいが、自分の空間は自分の自由に使いたい。


 合鍵を持ってはいないが、保管場所は把握している。

 オリジナルキーは壁にかかっていて、合鍵は下駄箱上の小物入れの中だ。合鍵であれば、数日借りたところで、気づかれる心配はないだろう。


 いつも通りに週末に泊まりに行き、日曜の夜、こっそりと合鍵を取り出して、ポケットにしのばせた。


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