2 あまいときめき
近くのコンビニで十分ほど雑誌を立ち読みしてから、ビール六缶パック、缶カクテル二本、チョコレート菓子を購入した。
部屋をでた時、空は夕陽で赤く染まっていたが、マンションに戻り、駐輪場でヘルメットを外した時には、すでに辺りは暗くなっていた。
六月になり、仙台も梅雨入りしているが、最近は晴れの日が続いている。
バイク乗りとしてはありがたく、今夜も夜風を切って走るのは爽快だった。
エレベーターに乗り込み、八階に到着して外廊下を歩きだした時、ダンッという衝撃音が背後から聞こえて振り返った。
ドアが閉まる途中、エレベーターのセンサーが何かに反応したらしく、ドアが全開になっている。落とし物でもしたか?
確認のため戻ろうとした時、無人のエレベーターのドアが、ゆっくりと閉まりはじめた。
感知性能が良すぎるのか故障か、時折同じことが起こるため、さして気にもせず踵を返した。
805号室のドアノブに手を伸ばすと、いきなり扉が開き、麗奈が飛びでてきた。
「おかえりなさい」
高志は、勢いに驚いてのけ反った。
「すごい出迎えだな、帰ってくるのよくわかったね」
「でしょ、愛のちから」
廊下に人がいないのを確認してから、得意気に笑う麗奈の頭を引き寄せた。
麗奈の身長は160㎝以上はあるように見える。俺との差は10㎝もないが、抱き合うにはちょうど良い。
「いい匂いがするね」
「わかる? トリートメントかえたの。そういう細かい所に気がつく高志、大好きよ」
実際は、廊下に漂う、肉を焼いているような香りのことを言ったのだが、
「まあな」と言って柔らかい髪に鼻をうずめた。
トリートメント変わったか?
麗奈から身体を離すと同時に、「痛い」と言う声が聞こえた。視線を落とすと、長い髪がシャツのボタンに絡まっていた。
「じっとしてて。外してあげる」そう言って髪に手を伸ばすと、麗奈は、肩に顔をうずめて抱きついてきた。
「このままでいい。ずっとこうしていられるし」
おい、可愛すぎるだろ……。
今度は、廊下を確認するのも忘れて麗奈を抱きしめた。
麗奈が顎を少しあげる。唇が触れる手前で「チュ」と唇を鳴らした。
普段は、電車や公園でいちゃつく学生を見れば、胸くそわるくて眉をしかめているが、こんな時は、大人の良識をあっさりとぶち破ってしまう自分がいる。
通常は“理性”に埋もれている照れや欲望を、麗奈の手によって簡単に引きだされる。
抱き合ったまま玄関の中に入り、後ろ手でドアを閉めてから、そっと唇を重ねた。




