不滅の炎と盟約
「...俺はシュレージエン王国に行くのがいいと思います。大戦争をあの魔術師が引き起こすとしたら、何万もの人が死ぬことになりますし。ずっと昔から生きてるなら、古代の禁術ももう手に入れてると思いますからね。」
それに忍びの里には行きたいけど行きたくない。そんな感情を押し込み、二択の選択肢を考え、シュレージエン王国に行くことを決めたカインをアルトリアは見つめて僅かに目を細めるが、カインの選択を静かに受け止めた。三つの鏡のうち、シュレージエン王国を示す赤い縁取りが施されている鏡が、彼の言葉に呼応するように強く輝きを増す。
「……賢明な判断です。戦争は最も多くの命を奪い、歴史を大きく歪める。そして、灰色の魔術師が『愚かな歴史』と断じるには、格好の舞台でもある。」
どうやらアルトリアもカインと同じ考えのようだ。彼女は鏡に手を触れ、その内部に映し出される映像を拡大した。そこには、荘厳な白亜の城塞都市と、その周囲を取り囲む広大な田園が映し出されている。城壁の上には、炎を纏った旗が翻っていた。
「シュレージエン王国――『不滅の炎』と呼ばれる国。その騎士団長、エクセリオン様は、私と同じく数百年の時を生きる不老不死の存在です。彼は歴史の干渉者ではなく、ただ自国を守ることだけを信念としている……非常に厄介な相手でもあります」
アルトリアは水晶板を操作し、さらに詳細な情報を呼び出した。
「現在、シュレージエン王国は北方の『鉄鎖同盟』と一触即発の状態にあります。発端は国境付近での資源争い。しかし、裏では何者かが両国を意図的に煽っている形跡がある。もし、この戦争が本格化すれば――」
彼女は厳しい表情で続けた。
「両国合わせて十万を超える兵が動員されます。そして、エクセリオン様が本気で戦えば、大陸の地形そのものが変わるほどの破壊が起こる。灰色の魔術師が、その混乱に紛れて何かを『消去』するつもりなら……」
「十万人も....」
カインはその規格外な数に戦慄する。
アルトリアはそんなカインに向き直り、真剣な眼差しで告げた。
「ただし、一つ問題があります。エクセリオン様は、私のような『歴史の干渉者』を快く思っていません。彼にとって重要なのは『国の未来』であり、『世界の歴史』ではない。もし私たちが王国内で動けば、最悪の場合、彼と敵対することになります」
彼女は東屋の外へと歩き出し、動かない噴水の前で立ち止まった。アルトリアは若干悩み、瞳に微かな陰りが差した。
本当にカインを連れてっていいのか、エクセリオンと敵対することになるのか。そういう不安が頭の中によぎんでいた。
「ええ。それでも行きます。」
そんな彼女にカインは迷いもなく、キッパリとそう言った。
アルトリアは、そんなカインの言葉を聞いて静かに頷いた。その瞳には、もはや迷いはない。彼女は右手をカインへと差し出し、握手ではなく――騎士が誓いを立てる時のように、その手を上に向けた。
「ならば、ここで誓いを立てましょう。カイン、あなたと私は今この時より、時を超えた盟約で結ばれます」
彼女の手のひらに、時計の歯車を模した紋章が青白く浮かび上がる。それは『星霜の時計塔』の紋章――時の守護者たる証。
「私、星霜を刻む守護者アルトリアは、ここに誓います。刻の銀盤を継ぐ者カインと共に、灰色の魔術師を討ち、歴史を守り抜くことを。たとえその道が、私自身の消滅を意味するとしても」
アルトリアの声には、確固たる決意が込められていた。そして彼女は、カインにも同じように誓いの言葉を求めるように視線を向けた。
「あなたも、誓ってください。復讐のためではなく、未来のために戦うことを。そして――もし私が、守護者としての使命に囚われ、あなたの道を阻むようなことがあれば、その時は迷わず私を斬ることを」
その言葉には、深い覚悟が滲んでいた。彼女は、自分が再び『冷徹な審判者』に戻ってしまう可能性を、理解していたのだ。
「.....俺も誓います。決して復讐にとらわれず、未来のために戦い、そして、灰色の魔術師を倒します。」
カインはその盟約の内容を聞き、一瞬躊躇したが、ここまで来たらもう止まることはできない。そう思い盟約を誓った。手に刻の銀盤の模様が浮かび上がる。そして二人の魔力が共鳴して風が巻き起こり、周囲の動くはずのない草花が風で揺れた。そんなどこか神々しいような風景をアルトリアは驚いたように見つめ、そしてふっと笑った。
「誓いが立てられたなら――出発しましょう。シュレージエン王国へ。いや、鉄鎖同盟に向かいましょう。エクセリオン様と私は顔見知りですし、私の魔力を感知してバレるかもしれません。ただし、その前に一つだけ」
アルトリアは東屋のテーブルに戻り、そこに置かれていた銀色のティーポットを手に取った。中の紅茶は、時が止まっているため、淹れたばかりのように温かいはずだった。彼女はそれを二つのカップに注ぎ、一つをカインに差し出した。
「これから向かうのは、戦場です。次にこうして座って話せるのは、いつになるか分からない。だから――せめて今だけは、『戦友』として、共に杯を交わしましょう」
彼女は自分のカップを持ち上げた。アルトリアは紅茶の味を楽しむことはできない。それでも――この儀式には、意味があった。
「シュレージエン王国の平和と、私たちの勝利に」
そうしてカップの中の飲み物を飲んだあと、2人はまずは鉄鎖同盟の方に向かった。
国解説① シュレージエン王国
国王はリオネル三世という名前の二十代前半の若い国王。父親が急死しちゃったので仕方なく即位した。エクセリオンは国王ではない。専制政治バリバリな国家で、数百年以上前から存在する古参国家。その主な理由はシュレージエン王国特別元帥という特殊な立ち位置にいるエクセリオンという騎士。彼は圧倒的な強さを誇り、何百年もシュレージエン王国を守り続けていたやべー奴。イメージは1700年くらいのドイツで、兵装はまだ騎兵隊や魔導部隊(魔法使いだけの編成)などがあるが魔導銃という名前の鉛玉を魔力を纏わせて発射させる兵器が完成し、魔導砲という名の地球でいう大砲なども完成してる。でもぶっちゃけ魔導銃の弾はある程度の実力者だったら避けれるし、魔導砲使わなくて普通に魔法使った方が威力出る。 それでも素人がすぐに兵士を殺せる兵器だとして注目は浴びてる。ちなみに最大の欠点は魔力の量の調節が難しく魔力の調節をミスったら暴発して普通に死ぬこと。




