灰色に埋もれた記憶 (後編)
誕生日会って書くと、なんか可愛いな(?)
誕生日会が大盛況を迎えた頃、俺は空を見上げた。すると空からは「灰色の雪」が降ってくる。
「灰色の雪?こんなのあるんだな。 でもおかしいな。今の季節じゃ雪は降らないはずなのに、、、。」
俺がそう呟いていると、周りの大人たちは血相を変えて叫んだ。
「大変だ!灰色の魔術師が、ついにこの場所を見つけ出したぞ!」
そう叫んだ瞬間、奴、灰色の魔術師が現れた。彼はその名の通り灰色のローブに身を包んだ、性別も年齢も不明な存在で、顔は深いフードに隠され、ただその両手だけが見えている。その手は、まるで老人のように皺だらけでありながら、同時に生まれたばかりの赤子のように滑らかでもあった。時間の概念が歪んでいる――存在そのものが矛盾している存在だと俺は思った。
「ふふふ。ようやく見つけましたよ。大変でしたよまったく。私が探してることに気づいたらさっさと里を捨てて移動するんだから。まったく。手間がかかる。まあいい。お前らが数百年守り続けてきた『刻の銀盤』をいただくとしようか。」
そう呟いた魔術師は、灰色の雪の量をさらに多くする。それが家に積もった瞬間、家が灰になって消えていった。
「、、、え?」
俺がとぼけている間にも魔術師はいろんなものを灰にしていった。あったかいポタージュ。楽しみにしていた豚の丸焼き、一緒に飲もうと約束したワイン、、、全部、全部消えていった。
「くそ!お前の好きにさせるか!」
親父はそう叫んだら闘気と魔力を身に纏って魔術師に切り掛かった。でも、魔術師はそれを防ごうともしない。そうして魔術師を親父は切り裂いた。
「やった!やっぱすげぇや、親父は!」
俺は歓喜の声をあげて、、、体が灰になっていく親父の姿を見た。
「え、、、親父?」
俺は呆然とした。あの親父が、俺が手も足も出なかった親父がこうも容易く、いとも簡単に、、、
「無駄ですよ。私という存在は歴史の外にいるんですから。歴史という名の巻物の中に存在するあなたが、巻物の外で巻物を読み、塗りつぶしたり切り取ったりする私をどう攻撃するとでもいうんでしょうねぇ、、、。」
魔術師はそう言いながら俺の方を見た。魔術師の目元は見えなかったが、その禍々しいオーラのようなものは感じ取れてしまったんだ。
「ひ、ひぃ。」
俺は恐怖に駆られて逃げるために起きあがろうとして、自身の右腕がないことに気づいた。
「あれ、お、俺の腕が、、、なんで?全く感じなかったのに?」
「ふふふふふ。言い忘れてましたが、私の灰を浴びたら痛みすら感じる暇もなく消し去ってあげますからね。痛みもなく無に帰すのだから、安心しなさい。」
「、、、父さん!母さん!みんな!!」
俺は呆然としながら走った。どこにいくかもわからないまま、振り向くと、そこは灰に飲まれていきどんどんものや人間がいなくなっていっている。人も、建造物も、そして思い出も。さっきまでの誕生日会とは真逆に、全てを消し去っていってたんだ。
「カイン!こっちじゃ!」
そうやって逃げ惑ってた俺に祖父は声をかけた。灰色の雪を浴び、ところどころ体の部位がなくなって致命傷を負っていて、ついさっきまで三年後に酒を飲み合おうと言ってたとは思えないほど悲惨な姿だった。俺はそんな祖父を見て涙がポロポロこぼれた。
「、、、じいや。父さんも、母さんも、グリフォードやオクソルも、みんな、、、。」
『じいや』と昔の呼び方に戻っているが、そんなのを気にしてる暇はなかった。そんな俺を祖父は里の地下深くにある、「禁忌の聖遺物庫」へと導いた。そこには、誰の手にも触れられぬよう封印されていた銀の円盤が浮かんでいた。
「.....この銀盤は、失われたものを修復する力を持つ。だが、それは歴史そのものを歪める呪いでもある……。カイン、お前がこれを選び、選ばれるなら、お前の人生は修復できぬほど壊れるだろう」
俺は、その時はパニックに陥っており言葉の意味を理解できなかった。だが、悩んでる最中、天井が灰になっていく。
「いかん!ついにここまでも、、、!」
祖父は俺を1秒でも長く生き延びさせようと立ち向かったが、一瞬で灰にされてしまった。そうして魔術師の手が俺にまで及ぼうとした瞬間、俺はみんなの最期の笑顔を思い出し、迷わず銀盤に手を伸ばした。だけど、それと同時に、魔術師が放った灰を固めたボールに直撃し、腹部に穴が開き、そこの存在が消滅しかけた。
その瞬間、不思議なことが起こった。銀盤は俺の絶望と怒りに呼応して眩い黄金の光を放ち、どんどん時間を戻していくように、いや、実際に時間を巻き戻して俺の体が再生していく。亡くなった右腕や、ところどころにある擦り傷なども。
そして、俺の右手に「刻印」として刻まれた。そして俺が親父からもらった誕生日プレゼントの剣の鍔に吸い込まれるように一体化した銀盤は、俺の気持ちに連動するように輝きを放っていた。
魔術師はそれを見て面白いとケタケタ笑い、その後舌打ちをした。
「チッ……感情に呼応して暴走しましたか。今無理に奪えば、この空間ごと『時間』が弾け飛びかねない。
……まあいいでしょう。今日のところは、そこの蔵にある『別の聖遺物』で妥協してあげますよ。精々、その呪われた命で地獄を彷徨いなさい」
そう言い捨てた後、魔術師は自身の体を灰にして、どこかにいってしまった。
そうして、灰色の魔術師は、俺の故郷と一緒に消えていった。もうそこには俺のすすり声しか聞こえなかった。
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そうして灰色の魔術師は俺を残して消え、俺はみんなを元通りにするためにここにきたってわけだよ。
人物紹介② 灰色の魔術師
自分の名前も忘れちゃった悲しき魔術師。なのでデ◯ノートで殺せない。いや、契約して目を貰えば殺せるかもしれないけど。はるか昔からいる不死身の人で、アルトリアは高位の精霊になって実質的な不老不死になったけど彼の場合はまったくもって不明。なんなら何をしたいのか、それをなんのためにやるのか、具体的な力はなんなのかなど全てが不明。アンノウンすぎる。なので魔術師の正体は邪神だとか悪魔だとか言われてるけど、案外元々は普通の心優しき一般人なのかもしれない。




