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天よ見てるか!?絶望者の祈りを

アルトリアは即座にアストラル・クロノスを抜き放ち、カインを庇うように前に立った。彼女の声は、怒りと警戒に満ちている。


「灰色の魔術師……! なぜここに! シュレージエン王国ではなく、鉄鎖同盟を狙うのか!?」


魔術師は、まるで子供をあやすかのように首を傾げた。


「狙う? 違うよ、守護者。僕はただ――『間引いて』いるだけさ。この街は、百年後に新しい魔導技術を生み出し、世界を戦火で包む。だから、今ここで消しておく。それだけのこと」


その言葉と共に、魔術師の周囲の空間が歪み、さらに多くの灰色の雪が降り注ぎ始めた。街が、音を立てずに消えていく。


「!?くそ、させるか!クロノ・シールド!」


そうカインが叫ぶと、触れると触れたものの時間が停滞する盾が出てきて街を覆い、灰色の雪を防いだ。だが灰色の雪が積もると結界は破れる。カインは結界が保つ隙に魔術師を切りつけた。 カインの剣が、灰色の魔術師の身体を捉えた――はずだった。


しかし、刃が触れた瞬間、魔術師の身体は煙のように霞み、カインの剣は虚空を斬っただけだった。次の瞬間、魔術師の姿はカインの背後に現れていた。


「おや、『刻の銀盤』で結界を? 面白い使い方だね。でも――」


魔術師が指を鳴らすと、カインが展開したクロノ・シールドが、まるでガラスが砕けるように崩壊し始めた。灰色の雪が再び街へと降り注ぐ。


「君の『繋ぐ力』は、僕の『還す力』の前では無力だよ。時間を修復しようとしても、僕が触れたものは『最初から存在しなかった』ことになるんだから」


その瞬間、アルトリアが魔術師とカインの間に割って入った。アストラル・クロノスが青白い軌跡を描き、魔術師の腕を狙う。


「カイン、下がりなさい! この相手は――」


しかし、アルトリアの剣もまた、魔術師には届かなかった。剣が触れる寸前、魔術師の身体が「過去の残像」のように薄れ、攻撃をすり抜ける。


「やあ、久しぶりだね、アルトリア。相変わらず無駄な努力をしているね。君の妹も、君と同じように僕に剣を向けたよ。そして、灰になったよ。あ、そういえばそんな記憶もなくなってるんだっけ?可哀想だね。君も被害者なんだんだから。」


アルトリアの表情が、一瞬だけ激しく歪んだ。なんでかはわからない。だが、怒り、悲しみ、そして――動揺。これらの感情がアルトリアを支配した。


「……貴様ッ!!」


彼女は感情を露わにし、連続で斬撃を放った。しかし、すべてが空を切る。魔術師は、まるで時間の隙間を滑るように、すべての攻撃を回避していく。


「君たちには分からないだろうね。この世界の歴史が、どれだけ『愚か』で『醜い』ものか。戦争、虐殺、裏切り――繰り返される過ち。僕はただ、それを『なかったこと』にしているだけなんだ」


魔術師は杖を掲げ、空に向かって宣言した。


「いい歴史も、悪い歴史も、すべて等しく灰に還す。そうすれば――この世界は、ようやく『白紙』に戻れる。ゼロから、正しい歴史を始められるんだよ」


その言葉と共に、街全体を覆うほどの巨大な灰色の魔法陣が空中に展開される。これが発動したら、この都市は消滅してしまうだろうと思うほどの禍々しさを放ってた。


「させません!!アクセル・フェイズ!」


アクトリアはそれを阻止しようと技名を叫ぶと、自身の思考と行動速度を極限まで加速させ、そうはさせまいと灰の雪を避けながら魔術師に斬りかかる。魔術師は杖を下げ、また体を灰にして避けようとするが、何を思ったか持ってる杖を一瞬で掲げ、その後アルトリアの音速をも超えるだろう速度の正面からくる斬撃を杖で受け止めた。


「なるほど、面白いことをするじゃないか。私が灰になろうとしたらそのなる前に戻したんだね。魔法陣を召喚した、あの杖を私が掲げているときに。でも、君程度の魔力じゃ、私の魔法陣を無かったことにできないようだね。残念だったね。まあ、そういうのは私が一枚上手だしね!」


そう言いながら後ろに下がり、魔法を発動させた。魔法陣から灰の塊が隕石のように降り注ぐ。そして当然というべきか、それに触れた物体は消滅してた。アルトリアはそれを追いながらカインに向かって叫んだ。


「カイン! 私が引き付けてるうちに、『刻の銀盤』でこの街の時間を巻き戻して! 魔法陣が完成する前の状態に!」


カインは無茶なことを言うなと思った。彼女ができないことをこの聖遺物を数年間修行しただけの若造ができるのかと。それに、魔力が足りる保証もない。


そう思いながらもカインはアルトリアの指示に従い、街の時間を巻き戻そうと試みる。しかし、魔術師の能力を前に苦戦する。 カインが『刻の銀盤』の力を解放した瞬間、彼の手から眩い銀色の光が放たれた。街を包む時間の流れが逆回転し始める――崩れた建物が元に戻り、灰になりかけた人々の身体が再生していく。


だが、それとは反対にカインの体に異変が生じる。ところどころ汗腺から血が垂れてきて、鼻血なども出る。だがカインは力を解放するのをやめなかった。もう2度と、何も失いたくないんだから。


しかし、その光は魔術師の灰色の魔法陣に触れた瞬間、激しく反発し合った。銀色と灰色、二つの力がぶつかり合い、空間そのものが悲鳴を上げるように歪む。



「おや、おや。『修復』と『消去』の力比べかい? 面白い――」


魔術師は愉快そうに笑い、さらに魔力を注ぎ込んだ。灰色の魔法陣が膨れ上がり、カインの時間巻き戻しを押し返していく。


アルトリアは魔術師に攻撃を加えるのを諦め、カインの背中に手を当て、自身の魔力を流し込んだ。


「カイン、一人で抱え込まないで! 私の力も使いなさい!」


二人の力が共鳴し、銀色の光がさらに強まる。しかし――魔術師の力は、それをも上回っていた。

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