消えた記憶と愛する人の嘘 65 「初めて迎える、甘く穏やかな朝」
朝の光がやわらかく部屋に差し込み、昨夜の余韻を優しく包み込んでいた。ふと目を開けると、ベッドの隣にまいの姿はなく、代わりにキッチンからかすかに立ち昇るコーヒーの香りと、小さな調理音が聞こえてきた。
そっと体を起こすと、まいがキッチンに立っているのが見えた。彼女はゆったりとしたTシャツを身にまとい、その裾からのぞく細い脚が無防備な色気を醸し出している。俺が目を覚ましたことに気づいたのか、まいは笑顔を浮かべながらこちらに近づいてきた。そして何の前触れもなく、俺の唇に軽くキスを落とし、「おはよう」と甘く囁いた。
その無邪気な仕草に、胸の奥がじんわりと温かくなる。嬉しさと照れくささが入り混じりながら、俺は思わず冗談めかして言った。
「まい、その格好でうろうろされたら、俺、ベッドから出られないよ…」
まいはその言葉に小さく笑い、少しだけ頬を染めながら、俺の額に指先で触れた。そして、いたずらっぽく囁く。
「もしかして、昨日の続きしちゃう?」
恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、どこか挑発するようなその言葉に、俺は思わず笑ってしまった。まいもつられて笑い、俺の頬を軽くつつく。
「朝ごはん、ちゃんと食べてからね?」
その言葉に、俺はゆっくりとベッドから抜け出し、まいの背中をそっと抱きしめた。まいは少し驚いたように肩をすくめたが、すぐに安心したように俺の腕の中に体を預ける。
穏やかで、幸せな朝。昨夜よりも、もっと深くお互いの存在を感じることができる、そんな朝だった。
次回、新展開!




