消えた記憶と愛する人の嘘 36 「まいの楽しい計画」
まいは ベッドの上の謙の顔をじっと見つめながら、ふと思いついたことを次々に口にし始めた。
「ねぇ、退院したら どこ行く?」
謙は 苦笑いしながら「いや、まずは家に帰るんじゃないか?」なんて言うけど、そんなの つまらない!
「せっかくの退院だよ!? どっか行こうよ! どこがいいかな〜……」
少し考え込んでから、まいは 思いっきり謙の顔を覗き込んだ。
「ねぇ、今何食べたい?」
「うーん……」
「やっぱり お寿司 ?」
謙が何か言う前に、まいは 勝手に答えを出してしまう。
「じゃあさ、どうせなら どっかの漁港 に行かない!? 朝獲れの海鮮丼 食べようよ!」
想像しただけで よだれが出そう。
「で、ドライブしながら行くの! 海沿いとか走ったら最高じゃない?」
まいは 勝手にプランを組み立て、どんどん話を続ける。
「もうさぁ、早く退院しないかな〜!!」
何度も何度も繰り返して言う。
だって、考えれば考えるほど 楽しくなってくるんだもん!
「……あっ!! そうだ!!」
まいは 突然ピンとひらめいたように手を叩いた。
「御殿場のアウトレット行かない!?」
謙が 「え?」 という顔をするけど、まいはもう 完全にノリノリモード に突入している。
「だって、謙の服、なんかちょっと地味じゃない? だから、まいが カッコよくコーディネート してあげる!!」
自信満々に胸を張る。
「絶対 イケメン風 にしちゃうから! お洒落なジャケットとか、カジュアルなシャツとか、似合いそうなのいっぱい見つけるんだからね!」
もう頭の中は 謙にどんな服を着せようか でいっぱい。
「あ〜もう、早く退院して!!」
まいは 腕を組んでウズウズしながら、まだベッドの上の謙をじーっと見る。
「ねぇねぇ、ほんとにどこ行く? 早く決めよっか?」
謙は 苦笑いしながら、「お前、テンション高すぎ」って言うけど、まいはもう止まらない。
だって、謙と一緒に出かけられるって思っただけで、こんなにワクワクするんだもん!