消えた記憶と愛する人の嘘 35 「おそろいのAirPodsと、まいの説明」
そんなふうにに笑い合ったあと、今日も 俺たちの時間 がスタートした。
まいは 得意げな表情 でバッグから 小さな白い箱 を取り出した。
「ジャーン!!」
「ん?」
「謙のAirPods! もちろん、ケースも グリーン だよ!」
俺の目の前に差し出されたのは、 深みのある落ち着いたグリーンのケースに入ったAirPods。
まいは 誇らしげに 「どう? いいでしょ?」と胸を張る。
「おぉ、ちゃんとグリーン選んでくれたんだな」
「もちろん! 私とお揃い だからね!」
まいは 自分のAirPodsのケースを取り出して 見せる。
俺のグリーンとは違い、 淡いバイオレットのケース だった。
「へぇ、お揃いって言っても 色違い なんだな」
「うん、まったく同じより、ちょっと違うけどペアって感じのほうがオシャレでしょ?」
まいは ニコッと得意げに笑う。
「なるほどな」
俺が頷くと、まいは満足げに微笑んだ。
—— その時だった。
「はい、ちょっと貸して!」
まいが 俺のスマホをパッと奪い取る。
「え、ちょっ……何する気?」
「ふふふーん♪ 見てればわかるよ!」
俺の問いかけには 軽く鼻歌まじりに答え、手際よくスマホを操作し始める。
まるで自分のスマホかのように、迷いなく動かす手。
「えっとね、まずは……これをダウンロードして……」
俺は 画面を覗き込みながら まいの指の動きを追った。
「……で、このアプリを開いてっと! ほら、これ!」
まいが スマホをこちらに向ける。
そこには 音楽配信アプリの画面 が表示されていた。
「このアプリね、音楽聴き放題 なの! たぶん、謙が聴きたい Uru とかも何でも聴けるよ!」
「へぇ、便利そうだな」
「でしょ!? 最高なんだから!」
まいは 胸を張って得意げに言う。
「ちょっと待って、今やってみるから!」
まいは 慣れた手つきで検索画面を開き、「Uru」と入力する。
すると すぐにアーティストのページが表示され、そこには たくさんの曲 が並んでいた。
「ほら! こんなにあるよ!」
「おぉ、ほんとだ……こんなに曲があるのか」
「そうなの! でね、ここを押すと プレイリスト が作れて、好きな曲をどんどん追加できるの!」
俺がスマホを受け取り、まいの指示通りに プレイリストを作成する。
「お、できた」
「よしよし! いい感じ!」
まいは まるで先生みたいに俺の画面を確認し、満足げに頷く。
「でね、ここで イヤホンと設定して……」
まいは AirPodsのケースを開け、俺のスマホにペアリングを開始する。
「ほら、これで完璧!」
「へぇ……こんなに簡単なんだな」
「うん! だからね、謙もこれからいっぱい音楽聴いてね!」
まいは ニコッと嬉しそうに笑う。
俺は スマホとAirPodsを見つめ、そして まいの顔を見た。
「ありがとうな、まい」
「えへへ! どういたしまして!」
本当に嬉しそうに笑うまい を見ていると、俺も 自然と笑みがこぼれる。
—— こんなふうに、まいが俺のために一生懸命になってくれることが、ただただ嬉しかった。