消えた記憶と愛する人の嘘 34 「寝たふりと悪戯心」
昨夜は投稿出来なくてすみません出した.
あと、少し投稿いたします、
茅ヶ崎渚
俺は 寝たふり をしながら、まいの様子を 薄目で じっと見ていた。
扉の隙間からそっと覗くように入ってきた彼女は、何かを企んでいる顔をしている。
(……さて、今度は何を仕掛けてくるんだ?)
興味深く様子を伺っていると、まいは静かにベッドへ近づき、俺の寝顔を覗き込んでいた。
表情をよく見ると 少しイタズラっぽい笑みを浮かべている。
(これは……何かやるな)
俺はバレないようにじっと息を潜めた。
そして次の瞬間、まいは そっと目を閉じ、ゆっくりと顔を近づけてきた。
—— キスをする気か?
俺の唇まで あと少し というところで、思い切って 「ワァッ!!」 と声をあげた。
「キャーーーッ!!」
まいは 本気で驚いたらしく、悲鳴を上げながら のけ反るように後ろに跳ねた。
俺は笑いをこらえながら様子を見る。
まいは 目を見開き、唇を小さく震わせたまま固まっている。
心臓の音まで聞こえそうなくらい驚いた顔 をしていた。
「……っ、ちょっと!!」
数秒の沈黙の後、まいは 顔を真っ赤 にして怒った。
「謙!! ひどい!! もう、ほんっとにひどい!!」
「ははは! いや、まいがそんなに驚くとは思わなくて」
「思ったよ!! 絶対思ったでしょ!! もうっ!!」
そう言いながら、ゲラゲラと笑い出した かと思うと、 勢いよく抱きついてきた。
そして 結構マジな力 で 俺の腕や肩をペシペシと叩く。
「痛い痛い! そんなに叩かなくても!」
「意地悪! 意地悪!! ひどい!! もう謙なんて知らない!!」
拗ねたように言いながらも、まいの 口元は笑っている。
—— その時だった。
ガチャッ
突然、扉が開き、ナースが顔を覗かせた。
「どうかしましたか!?」
俺とまいは 一瞬で硬直 した。
(やばい……絶対さっきのまいの悲鳴のせいだ……)
「えっ!? あ、いや、その……」
「な、何でもないです!!!」
まいが 慌てて手を振る。
俺も 必死に取り繕うように 口を開いた。
「私がちょっと 転びそうになった だけで……」
「そ、そうそう!! 転びそうになったら、謙がびっくりして 大きな声出しちゃって……」
「いや、まいが驚いたんで……」
「お互いびっくりしちゃって!! ほんと、大丈夫です!!」
ナースは じっと俺たちを見つめ、少し呆れたような笑顔を浮かべると 「……まぁ、問題ないならいいですけどね」 と言い残して扉を閉めた。
ナースが去ったあと、俺たちは顔を見合わせて プッと吹き出した。
「まい、言い訳下手すぎない?」
「えぇー!? 謙のほうが怪しかったじゃん!!」
「いやいや、まいが転びそうになったっていう設定、無理があっただろ」
「えぇー……じゃあ次からどうする?」
「……次もやるつもり?」
「えへへ」
まいは ニコニコと無邪気に笑いながら俺の腕にギュッと抱きつく。
「でもさ、楽しかったから許してあげる!」
「お前が楽しんでたならそれでいいけどさ……」
まいの 無邪気な笑顔 を見ていると、自然と俺も微笑んでしまう。
こんな風にくだらないことで笑い合える時間が、今は 何よりも愛おしい。