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消えた記憶と愛する人の嘘 28 「繋がる温もり」



バッグを閉じたその瞬間、 ピロンッ と軽やかな音が響いた。


「ん?」


ベッドの横に置いていた新しい携帯が、ほのかに光を放っている。

まだ誰とも連絡を取っていないはずなのに……


画面を開くと、LINEの通知。


送信者は——まい。


【謙、もう寝た?

私、なんか今夜は寝れないよ〜

謙のせいだからね〜

責任とってよねwww

今何してるの?

起きてたら返信ちょうだい

寂しいよ〜】


クスッと笑ってしまった。

まいらしい、甘えたがりのメッセージ。


「やっぱり……かわいいな」


そう思った瞬間、なんだか自分が素直になっていることに気づく。

記憶がない俺にとって、まいはまだ “知らない女” のはずなのに、彼女がこうして繋がってくれているだけで、心のどこかが温かくなる。


【起きてるよ

まい、Uruって知ってる?

どんな曲があるの?

有名なのか?】


少し間をおいて、まいからの返信が来た。


【えぇ!? 謙、記憶戻ったの!?

よく聞いてたんだよ、昔】


「……俺が?」


不思議な感覚だった。

知らないはずのアーティストの名前が、まいにとっては “昔の俺” を思い出させるものだったのかもしれない。


【明日でも話すよ。

LINEだと細かく書くの大変だから】


まいの言葉に、俺は


【わかった。そしたら明日ね】

と返した。


たったそれだけのやり取りなのに、昨日とはまるで違う。

LINEが繋がるだけで、まいが近くにいる気がする。


「いつでも話せるんだな……」


そう思うと、不安でいっぱいだった昨日の夜とは比べものにならないほど、気持ちが楽になっていた。


【そうだ。明日はテレビ電話で話そうね】


まいからの提案。


【わかったよ】


それからもしばらく、たわいもないやり取りを続けた。


メッセージのやり取りが途切れる気配がないほど、まいは楽しそうだった。

スタンプを送ってきたり、「もう一回言うけど、責任とってよね!」なんて茶目っ気たっぷりに送ってきたり。


彼女の嬉しそうな様子が、文字の向こうからでも伝わってくる。


——まいは、今、幸せなんだな。


そんなことを思いながら、俺はまた少しだけ、彼女のことが愛おしくなった。


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