水たまりに映っている自分は、実は本物なのよ♪
僕は、かばんを持って校門に向かう。今日は蝉の声も聞こえている、とても暑い日だった。気温は夕方になっても下がる様子を見せない。そんな中、校門を少し出たところでアイスを食べている少女がいたその少女は僕を見つけるなり駆け寄ってきて言った。
「下僕、早く行くわよ」
何か、いろいろと間違っているような気がした。少女が校門の前で男子を持っていて見つけるなりその男子に発する言葉が「下僕」だなんて・・・。だいち、僕は誰の下僕にもなった覚えはない。
「ちょっとまて、俺は、下僕ではないぞ」
「あら、ごめんなさい。成宮くんにプライドなんてものが残っていたなんて思わなかったわ。では、言い換えます。ごみ虫、早く行くわよ」
「すいませんでした・・・。下僕でいいです・・・」
僕はこいつに出会ってからの経験から知っている。ここで、口答えなどしてしまった日には、心にぽっかりと大きな穴があいてしまうということを。だから、僕が彼女に下僕と認めさせられる時間はたったの3秒だった。
「あら、プライドも捨てたのね。成宮くんと呼んであげてもいいのだけど、そこまで言うのなら、下僕にしといてあげるわ」
「ちょっと待てっ!・・・ちょっと待ってください!・・・ちょっと待ってくださりませんか?」
「よろしい」
「とにかくだ、成宮くんと呼んでくれ、お願いだから」
「しょうがないわね」
何がしょうがないのか、さっぱり僕にはわからなかったが、言わないでおく。とにかく、帰り道だった。いつも通りの帰り道だった。その時、誰かが抱きついてきた。
痛い・・・。なんで、殴られなきゃいけないんだ・・・。
とにかく抱きついてきた少女を引き剥がしてなぜだか、暴走中の若竹さんをなだめる。そして、抱きついてきた少女に言った。
「あのね、舞花ちゃん・・・。男に急に抱きついてくるのはよくないと思うよ」
「成宮先輩は、私の恩人ですから、いいんですよ」
「・・・とにかくね、そういうのはやめるんだ。拓斗くんが怒るんじゃないのかい?」
「拓斗にはちゃんと、私が愛してるってことを知らせてあるので先輩のは多めに見てもらえるんです。てへ」
だめだ、この人はおれに抱きついてくることを前から計画してやがる・・・。何なんだ、この後輩は・・・。
「成宮先輩はかっこいいんで、私は、拓斗と成宮先輩で両想いなんです」
「両想いの使い方が間違ってるぞ・・・」
なんか、隣からすさまじい怨念を感じる気がするのだが、気のせいだ、たぶん。
「とにかく、拓斗くんが退院してくるまで、そういう行為は避けた方がいいんだよ、分かった?」
とにかく、いつも通りの一日だった・・・
ここが、僕の学校になるところか・・・。目の前でじゃれている3人の人たちはなんなんだろう・・・。風紀がみだれた学校なんだろうか?やっぱり、ここでも僕はいじめにあう運命なのだろうか・・・。今からは変えられない。どうせ、ばれないんだ、大丈夫と、自分にい聞かせる。でも、分かっていた。いじめられっ子はどこでもいじめられるんだと・・・
次の日、僕は若竹さんと一緒にやっぱり学校に向かって歩いていた。アスファルトは太陽に熱せられてホットプレートのような状態になっていた。校門をくぐると見えてきたのは、死人の行進のような光景だった。文字通りのうだるような暑さだ。そんな中、教室に入る。教室の中もほとんど蒸し風呂のような状態だった。このごろはずーとこの調子だった。若竹さんが僕のクラスに入ってきた。
「成宮くん。成宮くんはなぜ成宮くんなの?」
なんか、聞いたことのあるようなセリフだ・・・。しかし、ついに若竹さんも女の子らしい素直で純情な物を身につけたようだ。
「僕はね・・・」
「成宮くんはなぜ邪魔物以下なの?」
前言撤回。たぶん、こっちが本音なんだ・・・。
「なあ、若竹。おまえさあ、そんなことを言って楽しいのかよ・・・」
「楽しいわけないじゃない。私は成宮くんがマゾだって言っていたからわざわざこういう言葉を使っているのよ?」
「いつ、だれがそんなことをいった?俺はマゾじゃない。それは確実なことだ」
「そう・・・。では、私がサドなの」
「本性をあらわしやがった!」
「あら、何を驚いているの?この世のすべての人間はサドで汚染されているのよ?」
「いやだ・・・。そんな社会はいやだ・・・」
「そういう成宮くんだって、私はたくさん傷つけているわ」
「それは、おまえが勝手に傷ついているだけだ」
学校にいても会話がこんなのだなんてとても悲しい・・・。というか、こいつと出会ってからこういう会話しかしてないようなきがするのは気のせいだろうか・・・?とにかくチャイムが鳴って、若竹さんは自分のクラスに戻っていった。
「風原 穂といいます。よろしくお願いします」紹介文を淡々と述べる。そう、淡々と。何かもやる気が起きない。どうせまたいじめられる。それだけは事実として残る。なぜなら、もう三度目の正直なんてものはとっくに過ぎてしまったのだから。クラスの人たちが僕の方に集まってきた。僕はそんな輪の奥の方に入れるように気を付けた。じゃないとだめなのだ。いつでも妖精たちは狙っているのだから・・・
昼休み、やっぱり屋上に行く・・・が、屋上は蒸し風呂よりもひどい状態だった。どうしようかと迷っていると背後から声が聞こえてきた。
「成宮くん。あなた、ステーキになりたいの?」
ひどい表現だ・・・。こいつはたぶん僕がステーキになっても気にしないのじゃないだろうか?とにかく、今日は屋上の入り口で食べることにした。そこはとてもひんやりしていて気持ちよかった。
「ねえ、成宮くん。転校生が来たそうじゃない。どういう子だったの?」
「う~ん、えっとね」
あれっ?そういえば話しかけていない。最近は、なぜか少し打ち解けてはいたが、僕はやっぱりクラスの中では孤立している。いや、最近はいやでも入らなくちゃならないことが多い。なぜなら、自分は孤立しているのだが、若竹には無理やり友達を作らせているからだ。まあ、そのおかげで一人打ち解けた人がいるようなのだけど・・・。そう、なぜか最近どうでもよかった学校生活が少し楽しみになってきたのかもしれない。なぜだろうか?たぶん、あの先輩のせいだろう。
「話しかけてないな」
「成宮くんは、人には友達を作れって言ってるのに、自分はまだ孤立したままなのね。まあ、いいわ。しょうがないから私が話しかけてあげる」
その時感じたとても嫌な予感が的中したことを僕は放課後に知ったのである。
昨日、女子を二人連れていた女たらしの人は、クラスから孤立していた。なぜあんな人が、いじめられるどころか女子に人気があるんだろう。僕とは正反対じゃないか・・・。あいつは敵だ。僕が倒すべき相手なんだ。どうせいじめられるんだ。あいつも一緒にいっしょにしてやる。
「で、なんでおまえは『私が話しかけてあげる』とか偉そうなこと言って俺を前に突き出してるんだ?」
「あなたはかよわい女の子にそんな重要なこと任せようっていうの?」
「おまえがかよわかったら世の中終わりだな」
「なんか、言った?」
「な、何も」
「私を侮辱した犬のフン以下のやつがいたような気がしたんだけど」
「いるわけないじゃないか」
「そうよね。犬のフンならいるけれど。私の目の前に」
「おれのことか、それは!?」
「えぇ!そんなことも分からなかったの!?」
哀しくなってきた・・・。
「あ、あの・・・」
「あ、ごめんなさい。全てこの成宮くんが責任とるから」
「勝手に人に押し付けるな」
「あら、奴隷とは主人の責任を背負うものよ」
「おれは奴隷なのか!?」
その二人は言い争いばかりしていた。結局、名前だけいって、また言い争いをしながら帰って行った。その時、なぜだかあの会話の中に入りたいと思った。なぜだろう?
翌日、外には久しぶりの雨が降っていた。傘をさして家を出ると家の横でピンク色の傘をさしながらしゃがんでいる女の子をみつけた。
「先輩、今度はなにをやってるんですか?」
「あっ、慈穏くん。ほら、見て。かたつむりさんと葉っぱの上でしゃべってたの~♪」
「で、何話してたんですか?」
「え?え、えっとね、雨は気持ちいいね、だって♪」
「それは、よかったですね・・・」
「何よー。慈穏くんが聞いてきたんでしょー」
そう言って先輩は頬を膨らました。
「はいはい」と適当に返事を返す。すると彼女はもっと頬をふくらませてなにかまたいってきた。そこへいちだんとムスッとした若竹さんが見た目や性格に似合わずかわいい傘をさして歩いてきた。
そして殴られた。
「ごめんなさい。どこかの星からきた宇宙人と見間違えたわ」
「俺は異星人じゃない。それに異星人にもまずは交渉を試みような」
これが「女は超能力者」っていうやつか。こいつに超能力なんてついてたら殺人兵器だな。
「もう、春奈ちゃんはかわいいな~♪」
でも、どんな人でもこの人には逆らえないらしい。これで天然なところが直れば完璧なんだが・・・
今日は新しい女の子が増えていた。そうして、あいつはどんどん女を増やしていくんだ。あいつがただの女たらしだとなぜ誰もきづかないんだ!?あんなやつがいるから俺はいじめられるんだ!
「先輩って女たらしだったんですか!?」
「へ!?」
なんでそうなる・・・。今は帰り道。若竹さんは何か急に用事ができたらしく毒舌を俺にはきだしてから先に帰って行った。
「クラスで噂になってましたよ」
「はあ・・・。君がそういったら離れてくれるっていうのなら、別にいいんだけどな・・・」
「そうですよね~。ただたんに先輩はモテるだけの存在ですからね~」
「何だよ、だけって・・・」
「しかし、どうするんですか、先輩?」
「なにが?」
「何がって、噂ですよ」
「ほっといたらそのうち消えるだろ」
「はあ・・・。ほんと、のんきですよね。あっ、私、たくのお見舞い行ってくるんで」
と彼女は去っていった。その時僕は、若竹さんがどこにいるかなんて全く考えていなかったのだった。
あいつの彼女らしきやつが迫ってきた。なんなんだ、こいつ。目障りだ。僕だって学び取れるものぐらいあるんだ。あっはっは。妖精さんざまあみろ。あっはっはっは
僕は学校に向かって歩いていた。途中で忘れ物に気付いたのだ。クラスには、まだ電気がついていた。誰かがいたら、すぐ帰ろうと思ってドアを開ける。すると目の前で何人かの顔見知りが抜け出そうともがいている、若竹さんの服を脱がそうとしているところだった。
「・・・何してるんだ?こんなところで。よく見たら、一人を除いてみんな知ってる顔じゃないか?」
「ひっ、成宮さん。すっすいません」
そういって出ていこうとする「顔見知り」を捕まえる。
「なあ、おい。俺がそのまま通すとでも思ってんのかな?」
その時、下から聞きなれた声がしたと思ったがもう気にしていなかった。こいつらはあのだめな父親とおんなじことをしたんだ。当然、こんなやつらこの世にいなくていいやつらに決まってるんだ!だが、殴りかかろうとした僕を誰かの小さなでもそこには力のこもった手が押さえつけた。
「だめだよ、慈穏くん。これは先輩命令なんだから」
そこには、よく知っている「先輩」の顔があった。彼女はまっすぐ僕を見つめていた。そんな彼女の眼に一瞬たじろぐ。でも、許せなかった。こいつらが。その時、誰かがそんな呆然と立っている僕の胸に飛び込んできたのだ。
「遅いわよ・・・。下僕のくせに・・・。このバカ・・・」
泣き声で、そう訴える少女の姿はとても儚かった。まるで、誰かのように・・・。その瞬間涙があふれてきそうで、必死に我慢する。今まで泣かなかったのに。絶対泣かないでと言われたのに。なのにどうしても、涙は止まらなかった。
「ねえ、お兄ちゃん。お兄ちゃんはきっと守ってくれるの?」
そう、無邪気に問いただす声が蘇ってくる。やめろ、やめてくれ。やめてくれよ!!
「・・・成宮?」
覗き込んでくるいつもよりもずっとよわよわしい瞳が目の前にあった。今、泣くとこいつらに迷惑がかかるんだ。それだけは絶対嫌で、強がった。
「バーカが、天下の若竹お嬢様が俺に泣きながらとびついてくる日が来るなんてな。ちょっと、変なことされそうになったからって」
「な、なによ!人がせっかく心配してやってるって言うのに。はあ、ちょっと私の泣き顔見れたからって調子に乗ってるんじゃないわよ?」
良かったんだ、これで。その時僕は、僕たち二人以外、もう誰もいないことに気づいた。もう一人の奴の始末は明日付けるとして、とりあえず今日は
「お嬢様、夜の道は一人では危ないですのでお送りしましょうか?」
「ふんっ、別に大丈夫だから、いいわ」
「じゃ、帰ろっと」
「ちょっと、待ちなさいよ」
「あらら、一人で大丈夫なんじゃないんですか?」
「あんたが、一人だったら強盗犯で指名手配されそうだから証明してあげる人がいるでしょ?」
「例えがおかしいよな!?完璧俺の顔は犯罪者で素敵なノリで言ったよな!?」
「あら、ノリじゃないわ。事実よ」
「すいませんでした・・・。生まれてきてすいませんでした・・・」
そんな会話を続けながら、少し暗くなった道を僕らは帰っていった。チョロチョロと雨の水音が響く中。
変な女に連れ出された。そいつは、わけのわからない話題ばかり振ってくる。カタツムリがどうやら、小鳥がどうやら。
「あーあ、慈穏くんにさよならをいう時間が無くなっちゃったわね。しょうがないからあなたに言っておくわ♪今回の教訓は水たまりに映っている自分は、実は本物ということよ♪あなたもそんなわけのわからない人生なんて送ってても楽しくないでしょ?」
こいつ、妖精を知っているのか!?ありえない・・・。そんなはずは
「もっと楽な生き方しなさい!困った時はわが後輩の慈穏くんに聞けばいいわ♪」
何を?そう言おうとして顔をあげたとき、さっきまでいたはずの少女はいなくなっていた・・・
次の朝、僕は学校で目的の人物を見つけると何も言わずに殴った。
「おい、おまえ。よくも昨日はのうのうと帰れたな!これでてめえのかりが清算したとか思うなよ。それから、若竹に謝れ」
彼は、謝った。もう少し時間がかかると思っていたのに驚くほどすんなりと。どうやら、若竹は許したらしい。笑顔で彼を起き上がらせた。それはいい。とても、いいことだ。だが・・・
「なあ、若竹。その笑顔は何だ?なあ、これは不公平ってもんじゃないのか?俺にはたぶん、それにだいぶ罵倒の言葉+蹴りがついてくるはずなんだが」
「あら、そんなにやられたいの?」
「いえ、いいです・・・」
なぜだ・・・。このままでは身が持たないぞ。これに対しては早急に手を打たなければ
彼らはまた、変な争いを繰り返していた。そして、それを僕はただ恨めしく思っていたのだ。だが、そんな僕に彼は言った。
「俺と友達になろう。これで貸し借り無しだ」
その日、太陽が照っている中で水たまりを見て気づく。そこにあるのはみにくくゆがんだ妖精なんかではなく自分の顔だということに。そして、ただそれが恐ろしくて仕方なかったんではないだろうか?なぜなら、今そこには、新し友達の顔と楽しそうに笑った、普通の少年の姿があったからだ。
え~
最初から読んでいただいてる方、感謝です
今回もやはり最後がちょっと適当になってしまいました
でも、まあ後、四作は書きたいと思っています
よろしくお願いします