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人形の映画館


気が付くと広い映画館にいた。

客席に座っているのは人形ばかり。動いている。

音は全くしない。


ぬいぐるみ、西洋、日本の人形、仏像のようなもの等。


着物の町娘人形が寄ってくる。

こちらをじっと見て首をかしげて口をパクパクさせている。


カパ!可愛らしい顔が、怖い顔に変化。

からくり仕掛けがあるタイプ。


空中を腹話術人形が漂ってきた。

白い手袋で触ろうとしてくる。


手で打ち払おうをするが人形の体を擦りぬける。

立体映像? 人形も戸惑ったように上に避ける。


右方向から来たティディベアが指輪を差し出す。

私は受け取る。小さい指輪なので小指にはめる。


ザワザワザワ。

声、物音が聞こえるようになった。


ティディベア

「これで波長が合った。コミュニケーションできる」


腹話術人形

「何してる、侵入者にアイテムを渡すなんて!」


ティディベア

「この人は侵入者じゃない。触っても変化しなかったろう?」


「だが招待客でもないだろう、付いている人形がいないんだから」



「あたしのゲストだ」

舞台の上。着物の女性の人形。

40センチ程の身長。


その上に大きい立体映像が展開する。

私の実家の風景。


実家の床の間に置いてあった人形の視点。

客席の人形たちが映像を鑑賞している。


実家の出来事が早回しで再生されていた。

人形の記憶を見れる装置らしい。


ティディベア

「さて、私はイタリヤの熊人形パパゲッティ、腹話術人形はジャッキー、

そちらの日本人形は八百屋お七だ」


ジャッキー

「なぜ名前を教える!」


「この人は悪意は無い。例の連中とは違う」


「例の連中って?」


「ああ、現れた、あいつらの事だ」




「何だここは、てめーらは何だ」

ガラの悪い四人組の男が出現。


パパゲッティ

「ソロモンの指輪をしているから君は超能力が使える。

彼らの心を見てみたまえ」


じっと連中を見ると。

彼らの記憶を見れる。

「アンティーク泥棒か。それで人形と関わりが。

 その他にもいろいろ悪事をやってる」


ジャッキー

「そういう連中は」


ジャッキーと他の腹話術人形たちが空中浮遊して近づく。

白い手袋で触れると。ボンッ!黒いぬいぐるみ人形に変わった。


ジャッキーがハサミを出して白い線を切る。

「これでこいつらの本体は死んだ。で、こいつらは」


首輪を付ける。「立て!」4つの黒人形が立ち上がる。

行進して出ていく。

「奴隷労働してもらう。あいつらの魂が人形に入ってる。抵抗できない」


私「労働?映画館で?」


パパゲッティ「いや、外に出てみよう」




映画館の外。ビル街。

アメリカの都会のような風景。


多くのぬいぐるみ、人形、おもちゃ、自動車、飛行機などが

走行、浮遊している。


パパゲッティ

「君もサイコパワー、超能力が使えるはずだ」

空に浮く。私も意識すると体が浮く。


上空へ。

自由の女神、奈良の大仏、スフィンクス、ゼウス像などが遠くを歩いている。


空を飛んで、巨大なイエス像が迫ってくる。


「パパゲッティ君、あの世からクレームが来てるよ、

悪人は地獄に落として拷問刑にするのに来ない連中が増えてる、

勝手に奴隷人形に変えないでくれって」


「それはジャッキーが勝手にやってることで。

直接そっちに言ってもらえませんか?」


「ではそうする、ほら、悪魔たちも来ている。

100以上の異形の怪物たちも付いて来ていた。


郊外の工事現場。黒人形たちが土方作業。

ジャッキーが現場監督。


イエス像

「悪人たちの魂をこの人たちに」


「嫌だね、実力でとってみろ、それ!」

戦車、戦闘機、メーザー砲などが攻撃。


悪魔たちが怒って反撃、混戦になる。


怪獣、ロボット、宇宙人などのぬいぐるみ人形も

ジャッキー側で戦いに加わる。


ジャッキーは肩から下げている小さい鞄から宝石付きの杖を出す。

四次元ポケットのような仕組み。


パパゲッティ

「操りの杖だ。杖も鞄もソロモンのアイテム」


杖の宝石が光る。

黒人形たちが集まって組み上がっていく。


数百から数千、そして数万。

空のあちこちからも黒人形の群れが飛んできて加わっていく。

巨大イエス像と同じくらいの身長、巨大黒人形に変化。


「それ、やってしまえ!」

黒人形がイエス像に組み付く。

橋を壊し、摩天楼を吹き飛ばしながら2体が格闘で戦う。



「ジャッキーは警備係なんだが。鞄を手に入れてからやたら荒事を起こすんだ」

パパゲッティが困ったように呟く。


「あ、そうか、君が来たのは・・・ちょっと頼まれてくれるかな?」

パパゲッティが私に話をする。




悪魔たちは格闘に加えて火炎、水鉄砲、雷撃、氷柱飛ばしなどで

攻撃するが、ぬいぐるみ、人形たちはダメージを受けにくい。


決着がいつまでもつかない。


ジャッキー

「悪党どもは俺の奴隷だ、飽きたら地獄に返してやるから

しばらくは俺のおもちゃとして遊ばせろ、帰れ!」


私はジャッキーの後ろから近づいて鞄を奪う。

バリヤらしきもので防御していたが通過できた。


「てめえ!」

ジャッキーは白手袋で私を触るが。何ともない。



パパゲッティ

「彼は人形化できない。招待客で指輪もしている。それに」


「戻れ!」カバンの口を開いて私は叫ぶ。

無数の奴隷の首輪があちこちから飛んできて鞄の中へ。


巨大黒人形は崩壊、怪獣たちや兵器の、ぬいぐるみ人形たちも止まる。

全員がジャッキーに操られていたらしい。



不動明王像が「降魔退散!」鉄拳! ジャッキーが吹き飛ぶ。

体からもうひとつの体が飛び出す。


出てきたのは凶悪な表情のチャッキー人形。

「く、ばれたか!」


パパゲッティ

「凶悪殺人犯の魂が宿った人形だ、本来地獄行きなのに

この人形空間に隠れた」


悪魔

「マジックアイテムの鞄さえなければ」


悪魔たちがチャッキーを捕らえる。

「く、離せ、俺は地獄でも大魔王だぞ!」


ナイフを振り回して悪魔たちを切り裂く。

「おまえのせいで!」私に飛びかかってくる。


フランス人形が横から飛び蹴り!

チャッキーを空中で弾き飛ばす。


「ジャッキーがおかしくなったのはおまえのせいか!」


「このアマ!死ね!」

振り回すナイフを避ける。


キックでナイフを手から飛ばす。

そしてチャッキーにパンチを浴びせてボロボロにして、キックでノックアウト。


倒れたチャッキーを悪魔たちが捕まえる。

「こいつは地獄の底で永久拷問してやる!」


地面に黒い空間が開く。その中へ消えていく。


ほかの悪魔たちも、黒人形たちを捕まえて

地獄へのワームホールへ入って行った。


全員が入ると黒い亜空間通路は消えた。



「あたしはミレディ。リアルっぽいフランス人形よ」


「やあ、僕からあいつを追い出してくれてありがとう。

僕は警備係のジャッキー、カンフーボーイ人形だ」


「警備係というと?」


ジャッキー

「悪い奴、人形、人間、その他を捕らえて処断する。

悪い人間は魂を取って、人間になりたい、っていう

人形の魂が入って現界に戻る。


「心を入れ替える」を実際にやってる。

悪人の魂は死神人形が地獄界に渡してる」



イエス像

「歪みを修正できた。感謝する」


「ええと、あなたは神さま、ですか?」


「いや、地球人の神というイメージが実体化した妖怪、と言ったところか」


「神の力を持ってるんなら、地上の悪事をどうにかできないですかね?

 野放しの悪人を全員地獄へ落とすとか」


「いや、因果応報、この世の運命の黄金律は私でも手出しできない。

私は悟りの最終到達者ブラフマン! 冗談男だから真剣に取らないでくれ!」


「ちょっと何、言ってるかわからない・・・」


「神の英知を簡単には理解できまい!」


「適当にごまかしてるだけでしょう」



パパゲッティ

「とにかくミッションコンプリート、任務達成、

お疲れサマータイムブルース、ということで」


私の意識が薄れて・・・




目を覚ます。

「夢だったか・・・あいかわらず奇妙な夢ばかり見る」


指輪は・・・当然していない。

「超能力が使えるようになるアイテムか。

 構造を調べて生産できればって毎回思うが・・・」


新しいものが発明されても、まずはドローンのように武器、

そしてスマフォのように商品化されて、人の幸福のためには

使われない。


詐欺、嫌がらせの道具に。使う人間しだい。

トップの政治家が、裏金で公金横領しても選挙で当選って。

希望が持てない世界だ・・・。夢もロマンも無い・・・。


あの白手袋で現界の悪人を、魂を封じた人形にでも変えてしまえば・・・

この世に取り返しに神様や悪魔が来て、わやくちゃになるだけか。


人形というより忍刑、我慢する刑罰が、この世なんだろうか・・・

それでは、あのみじめな黒人形の状況と対して変わらないような・・・

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