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――私は魔剣アイスブリンガーを取り出した。
目の前に倒木が現れたからだ。
――ただ切断するか躊躇われた。
低い場所で胸の下くらいの高さなので、すこし頑張れば乗り越えられそうであったからだ。
私はしばしの葛藤ののち、アイスブリンガーをアイテムボックスへ収納すると、濡れて苔生した倒木の上へよじ登りアンナマリー姫へ手を差し伸べる。
「はい。どうぞ」
――しかし、アンナマリー姫は手を取らない。
「だいじょぶですわ!」
そのまま倒木の上へ飛び上がった。悪魔となった彼女の身体能力は常人を超えるのである。
タン――
しかし体勢を崩してしまう。濡れたコケで滑ったのだ。
「あぶない!」
――私は倒木の下へ真っ逆さまにひっくり返ろうとしている彼女の下に滑り込み、どうにか受け止めることが出来た。
「た、助かりましたわ!」
そう言うと恥ずかしそうに先へ歩いて行ってしまうのであった。
――本来なら師が彼女を五体満足に連れ戻すはずだった。私が師のやり残した仕事をやり遂げるのだ。
私たちは幾重にも曲がりくねる、霞んだ道の先を目指して進む。
道行はいまだ遠い――。




