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左手の切り立った崖に規則的で奇妙な模様が浮かぶ。
垂れ下がった木の根が表面をなぞり、寂びた雰囲気を感じさせる。
――不意にその一塊が足元に転がり落ちて止まった。
私は違和感を覚えた。自然に崩れて転がったにしては、動きが歪に思えたからだ。
「どうしましたの?」
「いや――ちょっと」
私は立ち止まると屈みこみ、その石くれをまじまじと見つめる。
するとどうだろうか。小さな手足が生えて立ち上がるではないか。
話には聞いていたが初めて見た。珍しいこともあるものだ――。
「石の精霊が産まれた瞬間だね」
「不思議ですわ!
持って帰りたいですわ!」
「だめだよ。
山の精霊が怒っちゃうから」
「ぶー!」
アンナマリー姫は頬を膨らませると、さっさと歩いて行ってしまった。
どうやら機嫌を損ねたらしい。




