8.満腹+バスの揺れ=睡魔
8.満腹+バスの揺れ=睡魔
軽井沢プリンスホテルのランチブッフェ。見るからに旨そうな料理が所狭しと並んでいる。種類も和食から中華、洋食とありとあらゆるジャンルの料理がある。そしてデザートには旬のシャインマスカットを使ったものが何種類もある。
一同は案内された席に着くと、息をする間もなく料理を取りに席を立つ。あるテーブルに着いたグループ以外は。
「よし! ビール三本」
井川が早速近くのウエイターを呼び止めて注文する。食事の前に先ず一杯。まあ当たり前だ。
「俺はちょっと一休みだな」
仙台支店長の柿沢はここでアルコールを摂らずに食事のメニューとホットコーヒーを持って来た。他のメンバーはビールグラスを空にしてから、ゆっくりと立ち上り料理を取りに行く。各々が持ち寄った料理はほぼ酒のつまみだった。
「日本酒はないのか?」
「あると思いますよ」
小暮がウエイターに尋ねて確認するとあると言うので即注文。一流ホテルの豪華なランチを楽しむ場所で、ある一角だけは居酒屋と化している。それでも最後はちゃんと食事のメニューも食べて満腹でランチ会場を後にし、バスに戻った。
バスはこれから白糸ハイランドウェイに入り白糸の滝を目指す。ガイドが白糸の滝が出来た経緯などを丁寧に話してくれている。
「天明3年、浅間山の噴火により…」
「白糸の滝が形成されたのは天明3年の浅間山の噴火で…」
「天明3年…」
ガイドが何度も繰り返し言った“天明3年”というのがミソで、それは試験の答えにあたるワード。最前列の座席に座っていた日下部は後ろを振り返る。みんながちゃんとガイドの話を聞いているのかを確かめるために。
「まあ、そうだろうな」
日下部は苦笑しながらつぶやく。ほとんどのメンバーが鼾をかいている。腹いっぱい食べた後でこのバスの揺れに抱かれたら眠くなって当然か。
白糸の滝に到着。バスを降りると、みんな思いっきり背伸びをする。ガイドが滝まで案内してくれるのでその後をついて歩く。
「ここに来るバスの中でガイドさんが問題の答えをいくつか言いましたよ。皆さん憶えていますか?」
「寝てたから全然聞いてねえよ」