7.試験の答えは…
7.試験の答えは…
「この駐車場の場所を覚えておいてくださいね。時間に戻って来られなかったら、容赦なく置いて行くので。あとは自力で昼食場所の軽井沢プリンスホテルまで来てもらいますから」
バスを降りる前に日下部が念を押す。旧軽井沢銀座の入口まではガイドが案内してくれた。帰りはそれぞれに帰って来ることになる。
日下部のここ旧軽井沢銀座での目当ては一つだけ。三笠ホテルのカレーパンただ一つ。それを販売している店は旧軽井沢銀座の入口にある。早速目当てのカレーパンを二つ買って、一つは店の前のベンチに座って揚げ立てにかぶりつく。
「あー! 旨い!」
そして、食べ終わるとそのままバスが停まっている駐車場へ引き返した。
「早いですね」
「はい。何度も来たことがあるので」
「そうなんですね」
「一つお願いがあるんですけど…」
日下部はそう言ってガイドに旅行のプログラムを渡した。そのプログラムは試験に出題されるところが赤文字で記されている特別版だ。
「一応、この旅行は研修という名目でやっているので、今晩みんなには試験を受けてもらうんです。この赤文字のところが試験の答えになるので、ガイドをしながらさりげなく言葉で発して欲しいんですよ」
「なるほど、判りました!」
集合時間前に全員が帰って来た。今回のメンバーは本当に優秀だ。
小林商事では毎朝順番に朝礼を行っている。日下部は旅行が近くなってくると朝礼で問題のヒントを出している。もっとも朝礼時に社内に居る人間は限られているのだけれど…。そして、出発直前の朝礼ではこう言った。
「バスガイドさんの話はよく聞いていた方がいいですよ」
バスは昼食場所の軽井沢プリンスホテルへ向かった。旧軽井沢銀座からはすぐの場所だ。それでもガイドは旧軽井沢銀座にまつわる話…つまり、試験の答えになるワードをうまく含めて話してくれた。