6.発車
6.出発
新幹線に乗り込み席に着いたらお約束。買い出し班の三人が缶ビールとつまみを配って歩く。日下部も日本酒の瓶を取り出す。
「おっ! いいのがあるじゃねえか。それをこっちによこせ」
日本酒党の井川が早速日本酒を要求。日下部は事前に用意しておいて紙コップと一緒に日本酒を井川に渡す。発車前から宴会が始まる。
走り出して間もなく大宮に到着。大宮乗車組の小暮、四宮、川島が合流する。
「なんだ! もうやってるの?」
「当たり前よ!」
四宮の言葉を井川が一蹴。全員揃ったところで改めて乾杯だ。但し、周りの乗客に迷惑が掛からないよう、缶を掲げるだけの乾杯。それからというものは騒ぎ過ぎない程度に盛り上がり、あっという間に軽井沢に到着した。井川に預けた日本酒は当然だけど空になっていた。
新幹線を降りると改札を出る前にほとんどのメンバーがトイレに駆け込む。溜まったものを出さないと、この後入れなければならないものも入らないというものだ。まあ、無理に入れる必要もないのだけれど。
トイレ組を待つ間、日下部は改札の向こうで待っているであろうガイドを探す。きれいなガイドさんならいいんだけど…。そんな日下部の願いは一瞬で打ち砕かれた。ガイドはすぐに判った。すぐに判ったというのは遠目に見ても存在感がある体系をしていたからだ。他にそれ…ガイドらしい人が居ないか辺りを見回してみたけれど、ガイドと判るのは彼女しか居なかった。まあ、しっかりガイドしてさえくれれば、この際自分の好みは忘れよう。
「本日は宜しくお願いします」
このバスとガイドは今日一日だけのお付き合いだ。明日はホテルの送迎バスで湯畑まで行き、その後はバスセンターから貸し切りのマイクロバスで長野原草津口駅まで向かうことになっている。
全員揃ったところでバスに乗り込む。日下部はバスに乗り込むとすぐに心付けを渡した。ドライバーとガイドにそれぞれ一万円ずつ。心付けと言えば通常一日一人二千円~三千円程度が相場なのだけれど、それを考えると、一万円というのは破格だ。予算に余裕があるのと同行するメンバーが迷惑をかけることを考えての迷惑料も含めての日下部の判断だった。どのタイミングで彼らが封を開けるかは判らないけれど、中身を見たら思わず笑みがこぼれるだろう。
この後は旧軽井沢銀座の入口まで行ってバスを降り、旧軽井沢銀座を散策することになっている。