20.終宴
20.終宴
集合場所のバスターミナルは湯畑から坂道を登って行ったところにある。その坂道の途中に『ちちやバウム』本店がある。バウムクーヘン通の娘からのリクエストでまずそれを購入するために坂道を上る。そこから浦田に言われた二人、竹山と今日子の土産を買うために再び湯畑の方へ降りて行く。それぞれの土産を選んで宅配の手続きを終えて店を出ると、他に用事もないので早々とバスターミナルへ向かう。バスターミナルの中に食事処や軽食が取れる喫茶室がある。日下部はそこで昼食を取ってから、集合時間までの間をのんびりすることにした。
バスターミナルの待合室で待っていると入口正面のそれらしいバスが停まった。ここからは最寄りの駅である長野原草津口駅まで行く。およそ30分程度なのでマイクロバスを貸し切った。集合時間前には全員揃ったので、バスに乗り込み長野原草津口駅へと出発した。
バスは予定より早く到着したので、電車の発車時刻まで40分ほどの時間が出来た。喫煙組は真っ先に喫煙所へ向かう。
「昨日のコンパニオンは質が良かったですよ…」
四宮が話を始めた。
「温泉場のコンパニオンといったらババアのイメージがあったけど、コロナでそんなババアたちがみんな辞めちゃったから、今はああいう若い子ばかりなんだって」
コンパニオンを強く要望しただけあって、ずいぶん彼女たち、とくにリーダーとは話し込んだようだ。
「昨日泊まったホテル、コロナ以降でコンパニオンが来たのは僕らの宴会が初めてだったからコンパニオンの扱いが解らなくて困ったって仲居さんが言ってましたよ」
そんな話をしながら笑う四宮。ただ単に面白おかしくバカ話をしただけではなく、そういう話までしっかりするとは。四宮君にはコンパニオンマスターの称号を与えたい。
それから喫茶コーナーへ移動すると、田辺や岡本たちがそこに居た。そこで今度は二次会とコンパニオンの値段の話になった。
「まあ、二次会の金額はさっき話した通りなんだけど、コンパニオンの延長料金はそれと同じくらいだったかな」
「そうなんですか!」
田辺も岡本も驚く。
「でも、あれだけ質のいいコンパニオンで3時間以上引っ張ったんだから、妥当だと思いますよ。なんなら協力会であと5千円づつくらい出しましょうか?」
四宮がフォローするように言う。金を払った日下部をフォローしたのか、大枚かっさらって言ったコンパニオンをフォローしたのかは何とも言えないけれど。
「それは出した方がいいですよ」
岡本も田辺も頷いて追加の出費に応じる。
「でも、今回の旅行は本当に楽しかったですよ」
田辺が感極まったように言うと、岡本たちも頷いた。
帰りの電車の中は静まり返っていた。みんな二日間の疲れが出たようだ。そして、予定通り上野に到着した。到着後は上野で反省会をやる予定になっている。当初、そこにも参加する予定だったメンバーのうち岡本、宮城、穴井の三人がそのまま帰るというので、残った7人で反省会という名の最後の飲み会を終えて解散した。
今回の旅行は四宮のコンパニオン発言で始まり、四宮のコンパニオンのべた誉めで終わった。当然、いちばん楽しんだのは四宮だったに違いない。日下部はまんまと四宮の口車に乗せられた格好だったのだけれど、もちろん、そんなのは承知うえで立ち回っていたに違いない。まあ、多少予算をオーバーしたのはご愛嬌ということで。




