18.金はあるはずが…
18.金はあるはずが…
翌日は朝から雨だった。窓の外には霧が立ち込めている。テレビのニュースではこの日は関東で一番寒いのは草津なのだと伝えていた。
昨夜は試験の採点で風呂に入る時間がなかった日下部はまだみんなが寝ているうちに風呂へ行った。そこで川島と行き合った。川島はちょうど風呂から上がってきたところだった。
「日下部よ、俺、朝一の送迎バスで先に出るから。親父がいよいよヤバいみたいだ」
「昨日の電話はそのことだったんですね」
川島は頷いて風呂を後にした。
昨日、仕切りに電話をしていたのは、やはりそのことだったようだ。同時に日下部の頭の中には昨夜の二次会での川島の姿が思い出された。そんな時によく女の尻にうつつを抜かしていられたものだ。その気になれば昨日のうちに帰ることもできたのではないか。
“じたばたしても始まらない”来ちゃったんだから、きちんと楽しんで帰ろう。そんな風に腹をくくったのか…。それと、なるべくみんなに心配をかけたくないというのもあったに違いない。
朝食の時間が近づいてきた。
「そろそろ朝飯に行きましょう」
部屋のメンバー揃って朝食会場へ向かう。ところが、朝食の時間が昨夜チェックインしたときに聞いたのと違っていた。小林商事の朝食時間は30分後なのだという。日下部はフロントが記入した朝食時間が書かれたものを提示したが、現場ではまだ準備が出来ていないとのことで仕方なく待つことにした。
そんななか、朝食会場の傍にある読書コーナーで川島の姿を見かけた。ホテルからの送迎バスを待っているのだろう。本来なら朝食をとってからホテルを出られるはずだったのだけれど朝飯抜きで出ることになった。川島には申し訳ないことになってしまった。
朝食を終えると日下部は精算を済ませておこうとフロントに向かった。日下部が精算を申し出るとフロントは追加料金を提示した。
「1760円になります…」
あれっ? そんなもの? 日下部は拍子抜けした。すると、フロントはもう1枚の伝票を出してきた。
「あっ、こちらもありました」
その“こちら”がコンパニオンの延長料金になる。
「併せて8万9千760円になります」
まあ、そうだよな。そう思い直して巾着袋の中の残金を確認する。やばい! 足りない!
「すみません、ホテルの中に銀行のATMはありますか?」
「ATMは無いんですよ。でも、湯畑へ行く途中にコンビニがあります」
「ありがとうございます。ちょっとお金をおろしてきます」
日下部はそう言うと、一旦、部屋に戻って上着を羽織ってから関東で一番寒い草津の街へと飛び出し、コンビニに向かって駆け出した。




