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17.スリッパは?!

17.スリッパは?!


 川島は例のコンパニオンを隣に侍らせてずっと尻を撫でている。彼女が良いなら問題はないのだけれど、変に騒がれでもしたらかなわない。日下部は川島がトイレに立ったのを見計らって彼女に聞いた。

「いやだったら、金玉蹴飛ばしてもいいからね」

「お気遣いどうも。でも、これくらいなら大丈夫です」

 それならまあいいか…。

 四宮はリーダーを隣において機嫌を取りながらも楽しそうに話し込んでいる。出発前から所望していた念願のコンパニオンだ。楽しくて仕方がないのだろう。小暮、名取、須崎はコンパニオンに関係なく三人で盛り上がっている。日下部の隣には新人の子がずっと座っている。

「こういうの、どうしたいいのか分からなくて…」

「そんなに気にしなくてもいいよ。取り敢えず、ボクの横に座っていればいいよ」

 田辺はコンパニオンの一人とLINEを交換したらしい。みんなそれぞれに楽しんでいる。そういう時間はあっという間に過ぎていく。日下部は時計を見る。

「そろそろ終わりにしないとやばいかも…」

 そう思った日下部はリーダーにその旨を申し出た。リーダーは頷くとママから伝票を受け取り持って来た。金額は…。¥106,000! 考えてみれば、それくらいになるか。10人で結局3時間以上も居たのだから。これはちょっと予想外だったけれど、まあ、金はある。日下部は料金を支払う。


 第一陣が送迎車へ向かう。そのグループは夜の湯畑を見てからホテルまで送ってもらう。10月も半ばとなると、夜の湯畑はかなり寒い。そんな湯畑に浴衣のままで歩く連中など他には居ない。が、酒も入っていい気分でいる彼らにはそんなことは関係ないか。各々、風景の写真を撮影したり、何人かで記念写真を撮ったりしては短い時間ではあったのだけれど、満喫した。

 居残り組はどこにも寄らずにホテルへ直行する。それまで間、店で歌ったり飲んだり、残ったコンパニオンと喋ったり残された時間を楽しんだ。


 間もなく居残り組を送り届ける送迎車が戻って来た。外に出ると、最後まで付き合ってくれていた新人コンパニオンが足を取られてへたり込んだ。

「大丈夫?」

「すみません。ちょっと酔っ払っちゃいました」

 りだーに抱きかかえられながら彼女は言った。酔っ払っているのは誰の目にも明らかだった。それもちょっとやそっとではない。きっと緊張からつい、飲み過ぎてしまったのだろう。

「幹事さん、ここどうぞ」

 日下部は二人のコンパニオンの間に乗るよう勧められたのだけれど、敢えて助手席に乗り込んだ。ホテルに着くと、コンパニオンたちに別れを告げた。

「あれっ?」

 田辺が気が付いた。

「穴井さん、裸足じゃないですか!」

「ああ、スリッパがどこかで無くなっちゃったんだよ」

「えっ! 無くなったって…いつからなの?」

「車に乗ったときには履いていたと思うから、多分、降りるときに脱げたのかも知れない」

 そもそも、ホテルのスリッパのまま外出したこと自体がどうかしている。ここはもう笑うしかない。





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