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16.真剣勝負!

16.真剣勝負!


 金はたっぷりある…。なので、日下部はあるゲームを提案した。

「カラオケで一番いい点を出した人にボクが賞金を出しますよ!」

 そう言って日下部は巾着袋から5千円を取り出して見せる。

「おーっ!」

 その場が一気に盛り上がる。すると、コンパニオンのリーダーからチーム戦にしようと言う提案が出た。彼女にしてみれば、誰か一人に持っていかれるよりチーム戦にした方が金額は少なくなるかも知れないけれど、コンパニオンにもおこぼれが入ってくる。リーダーとしてそういうことを考えていたのかも知れない。もっとも、そのためには勝たなくてはならないのだけれど。

「いいですよ。では、そうしましょう」

 チーム分けはテーブルの真ん中で右と左とで分けることになった。仮に右をゾウさんチーム、左をクマさんチームとしよう。

 先ずはゾウさんチームの岡本が歌う。78点。まあまあの点数だ。続いてクマさんチームからは四宮に後押しされた穴井がマイクを持った。イントロが流れる。穴井の十八番“津軽海峡雪景色”第一声…。

「ちょっと! 真面目にやってよ!」

 穴井が歌い始めた途端、リーダーが怒り出す。穴井の音痴には定評がある。四宮はそれを知っていて場を盛り上げるために穴井に歌わせた。ところが、勝負が掛かっているリーダーは怒り出してしまった。そんなに真剣にならなくてもいいじゃないか…。誰もがそう思ったに違いない。場を盛り上げようとした日下部の提案と四宮のチョイスが台無しになる寸前のところで四宮がリーダーを宥める。

「まあまあ、まだこれからだから。これをあげるから勘弁して」

 そう言って四宮は試験でゲットした商品のクオカードを彼女に差し出した。その額面はカラオケの賞金と同じ5千円。リーダーはそれを受け取るとなんとか機嫌を直した。

 両チームから数人ずつ歌い終わったところで点数はドングリの背比べでパッとしない。勝負はコンパニオン対決の様相を呈してきた。


 勝負はリーダー率いるクマさんチームが勝利した。最後に歌ったリーダーが96点の高得点をマークしての大逆転勝利。日下部から賞金の5千円を受け取って満面の笑みを浮かべた。リーダーがそれをどう分配したのかは判らないけれど。少なくとも小林商事側の面々は誰も受け取ってはいないだろう。だからといって、そのことに対して文句をいう者は誰も居ない。そして、その後もカラオケは続いた。





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