12.乾杯
12.乾杯
宴会場での席は上座・下座などに関係なく、抽選で決められる。協力会の田辺には席に番号札をランダムに置いてもらい、入場時に番号札を引いて、同じ番号の席に着く。幹事の日下部だけが末席の位置に着くことになっている。全員が席に着いたところで進行役の日下部が立ち上がる。
「皆さんお疲れ様です。酔っ払う前に…もう酔っ払っている人も居るかもしれませんが、明日の日程について説明しておきます…」
日下部は翌日の日程を一通り説明した。そして、日下部のサプライズ企画が発動。
「席に封筒が置かれていると思いますが、その中に明日の昼食代が入っていますので、その範囲でご自由に飲食してください。残金の返却は必要ありません。領収書もいりませんので、飲み食いで余ったお金はお土産にでも何にでもご自由にお使いください。それから、先程引いた番号札に数字以外の文字が書かれているものを引いた方はいらっしゃいますか?」
井川と穴井が手を挙げて番号札を掲げる。ここでも井川の強運が際立った。逆にここで運を使った穴井には後々まで語り継がれるであろう“オチ”が待っている。井川が引いた番号は“10”。その数字の両側にカタカナで“ド”と“ル”の文字が書かれている。穴井の番号は“7”。これはオーソドックスにラッキー7。
「それは当たり札なので、昼食代が入った封筒の中に当たりの賞品が入っています」
早速、封筒の中を確認する二人。穴井の封筒の中には現金の他に映画のペアチケット。そして井川の封筒の中には…。
「なるほど! そういうことか。ド10(トー)ルね」
井川の封筒に入っていたのはコーヒーチェーンのプリペイド式バリューカードだった。頭の回転が速い井川はすぐに判ったようだ。
「当たった方はおめでとうございます。では、宴会のスタートとさせていただきます。乾杯の音頭は井川部長にお願いします」
日下部がそう言うと控えていたコンパニオンたちが入ってきて、ビールの栓を開けて回る。そして全員のグラスにビールが注がれたところで井川が立ち上がる…。井川の乾杯のスピーチは割愛する。
「乾杯!」
コンパニオンは4名。幹事の日下部を除けば三人に一人のコンパニオンが付く計算だ。4人のコンパニオンはみんな若くてきれいな子たちばかりだった。有名温泉地だとコンパニオンの質もいいのか。




